この展覧会の後期に展示されている「真珠庵本」は、《百鬼夜行絵巻》の代表作とされ、多くの模本を生んでいる。中でも、琴や琵琶の妖怪が練り歩く描写などは、やはり怖いというよりも楽しい。長い年月使われてきた物に何かが宿っていることの表現は、付喪神(つくもがみ)信仰の表れだ。付喪神は、捨てられた物が人間に恨みをはらすことに端を発しているというが、ひょうきんに練り歩く姿などを見ていると、むしろ愛でたくなってしまう。
伊藤若冲の《付喪神図》も、そんな対象の一つだ。湯のみ、茶釜、茶筅などたくさんの茶道具が、神が宿った姿で描かれている。図版では以前から何度も見ていたこの絵の実物を見て感心したのが、濃淡による陰影表現だ。西洋の絵のように光源が特定できるような表現ではないが、こうした異世界の絵だからなのか、妙に立体感が増しているのである。
(江戸時代、18世紀、福岡市博物館蔵)
※前期(7月5日~31日)
こうして見ると、日本の画家は現実と想像の世界を縦横に行き来していたことが分かる。その自由さが妖怪の世界から見えてくるのである。
「大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで」
大阪展:2016年9月10日~11月6日、あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)
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