『ル・ジュルナル』紙に掲載された記事と判明

 ポーラ美術館が2005年に行った透過X線による調査では、この作品の下層にピカソが描いた別の女性像が存在することが分かっており、今回発見された新聞の活字はその上、つまり2つの絵画の中間の層にあると見られる(さらに下層にも別の絵画があるらしい)。

《海辺の母子像》透過X線画像と赤外線ハイパースペクトル主成分分析画像の合成画像
©Institute for Cultural Properties, Tokyo / John Delaney, National Gallery of Art, Washington

 同館の今井敬子学芸課長は「今回の調査で浮かび上がった文字をフランスの新聞記事検索システム『ガリカ』を使って調べたところ、1902年1月18日付の『ル・ジュルナル』紙に掲載された記事であることが判明した」という。「ガリカ」では紙面の写真を見ることができる。今回の撮影画像で見えた文字の書体や見出しの真下の飾り罫などを比べても、同一の記事であることの信憑性は高そうだ。

左:『ル・ジュルナル』紙(1902年1月18日号、3頁) Source gallica.bnf.fr / BnF
右:赤外線ハイパースペクトル擬似色彩による新聞紙の画像(反転画像) ©John Delaney, National Gallery of Art, Washington

 一方、同館は新聞紙を使った理由について「画面を覆って別の絵を描くためだったなどの理由が考えられる」(今井学芸課長)という推測を発表するにとどめ、「調査は始まったばかりであり、今後古い新聞で実験をするなどして研究を続けていく」としている。

 とはいえ、現時点で明らかになった内容だけでも、さまざまな推理が可能だ。謎解きは美術品と向き合ったときの大きな楽しみである。ここではその楽しみの一端としての「推理」を記しておきたい。