経営者やリーダーに求められる物事の捉え方、アイデアの生み出し方、ビジネスに欠かせない思考方法を、グロービス経営大学院の教員が重要なフレームワークから体系的に紹介していく当連載。今回は「ピラミッドストラクチャー」について解説する。うまく主張を伝えられない、発言の説得力が弱いと感じる人に特に試してほしい手法だ。

ピラミッドストラクチャーとは

 ある主張や仮説を展開する際、その正当性や重要性を論理的かつ客観的に説明することは容易ではありません。そんなときに役立つのが、今回紹介する「ピラミッドストラクチャー」です。

 ピラミッドストラクチャーとは、「主張」と「根拠」をピラミッド状に図式化していくフレームワークで、論拠を整理し、主張の説得力を増すのに役立ちます。

 一番上に「主張」があり、その下の階層に主張を支える2~4つの「根拠」、さらにその下の階層に「根拠を支える根拠」が続いていく、まさにピラミッドのような構造になっています。

 どの階層でも、上段から下段に向かって「Why?(なぜなら)」と説明できる関係にあります。同様に下段から上段に向かっては、「So What?(だから何?)」に答える関係でつながっています。

A事業から撤退すべきかどうかを検討するピラミッドストラクチャー
A事業から撤退すべきかどうかを検討するピラミッドストラクチャー
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 「A事業から撤退すべき」という主張は、「将来性がない」「収益率が低い」「強みが生かせない」という根拠に支えられています。逆に、「将来性がない」「収益率が低い」「強みが生かせない」ので、「A事業から撤退すべき」という主張になるわけです。根拠が明確に示されているため、単に主張のみを述べる場合よりも説得力が増すのです。これは、さらに下の階層でも同様です。

 ピラミッドストラクチャーを作る上で大切なのは、まず「イシュー」(議論すべきポイント)を明らかにすることです。どれだけ論理展開がしっかりしていても、そもそも議論する価値がないことを話し合っても意昧がないからです。

 そうしてイシュー、主張が設定できたら、次に「根拠」である「ロジックの枠」を作ります。特に主張を支えるすぐ下のロジックの枠は非常に重要です。

 ロジックの枠に、ビジネスフレームワークを用いてもいいでしょう。例えば、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)という3つのCについて分析する「3C分析」に従って、ロジックの枠に「市場の見通し」「競合」「自社」のそれぞれの状況を「根拠」として入れるわけです。

 ピラミッドストラクチャーを作る際は、主張から根拠を集める「トップダウン方式」と、観察される事実から主張を導く「ボトムアップ方式」の両方を適宜組み合わせるのが一般的です。

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