企業の働きがいを調査・分析するGreat Place to Work Institute Japan(GPTW)の代表・荒川陽子氏が、社員が生き生き働く企業の取り組みを紹介する本連載。企業事例の第1回は、同社が実施する「日本における働きがいのある会社」ランキング中規模部門(従業員数100~999人)で5年連続1位を獲得している、コンカー(東京・千代田)。2010年の設立当時、業績ばかりを追い求めた結果、組織崩壊の危機に陥ったというが、その後、どのように働きがいを高めていったのか。三村真宗社長に話を聞いた。

 コンカーは、経費精算を中心とした、間接費業務のクラウドサービスを提供する。米シアトルに本社を持ち、日本法人が設立されたのは2010年。国内シェアは56.8%(ITR 「ITR Market View:予算・経費・サブスクリプション管理市場2022」より)を占め、国内大手企業のおよそ3分の2が同社のサービスを利用している。

 新型コロナウイルス禍で出張が減少した20~ 21年は、一時的に売り上げが下がったものの、22年は回復。コロナ禍の期間を除くと、設立以来、業績は右肩上がりだ。

 11年10月に同社代表に就任した三村真宗社長は、「従業員の働きがいと会社の業績は直結する」と明言する。

業績重視のマネジメントを反省し、働きがい向上を目標に掲げた

 三村社長が従業員の働きがい向上の取り組みを始めたのは、社長就任から1年たった12年のことだ。

 「外資系の社長は、成果が出なければすぐに更迭される。私自身、初めての社長業で、いつ退任を言い渡されるか分からない、という危機感を常に抱いていた。その結果、会社の文化づくりは後回しにして、業績重視のマネジメントをしてしまった」と三村社長は振り返る。

三村真宗社長は慶応義塾大学卒業後、日本法人の創業メンバーとしてSAPジャパン(東京・千代田)に入社し13年間勤務。マッキンゼー・アンド・カンパニーや電気自動車インフラ関連の外資系企業などを経て、2011年から現職。3月に最新著書『みんなのフィードバック大全』を刊行予定(写真提供/コンカー)
三村真宗社長は慶応義塾大学卒業後、日本法人の創業メンバーとしてSAPジャパン(東京・千代田)に入社し13年間勤務。マッキンゼー・アンド・カンパニーや電気自動車インフラ関連の外資系企業などを経て、2011年から現職。3月に最新著書『みんなのフィードバック大全』を刊行予定(写真提供/コンカー)

 その結果、社内は混沌とし、重い空気が流れた。もちろん、業績も上がらない。「この状況を何とかしなければ」と考えていた矢先、三村社長は自宅の本棚にヒントを見つけた。それが、若い頃に読んだ『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』(日経BP刊)だった。

 「本の中には『誰をバスに乗せるか』という趣旨の章があり、正しい人をバスに乗せれば、ビジネスはおのずと目的地に向かう、と書かれていた。私は自分自身の経営方針や採用方針のせいで、誤ったチームづくりをしてしまった。やり直したいと考え、同じ目的地に向かえない数人には、バスから降りてもらうことにした」と三村社長は話す。

 残った社員は三村社長を含めて13人。全員で合宿を実施して、現在の課題や今後の目標を話し合った。そこで掲げた目標は2つ。業績面では、5年後にグループ内で米国本社に次ぐ業績を上げる会社になること。そして、もう1つ、「日本のIT(情報技術)業界で最も働きがいのある会社になる」という定性面の目標を掲げた。

 「当時、社会的にも今ほど『働きがい』というキーワードは注目されていなかった。そんな中で、業績第一主義に走ってしまわないよう、自分にたがを掛けるにはどうしたらいいかと考えたときに思いついたのが、社員の働きがいだった」と三村社長。そこから、コンカーの働きがい向上の取り組みが始まった。

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