ハワイの中でも特に著名な観光・保養地として知られる「ワイキキ」。美しいビーチが広がり、ショッピングエリアへのアクセスが便利な立地だ。今でこそ、自然と都会を一度に楽しめるリゾート地として親しまれているが、かつては農村であり漁村であり、そして王族の別荘地であった。そんな知られざるワイキキの歴史を前後編で追っていく。

「ワイキキ」とは何か
世界的に有名なリゾート地である「ワイキキ」。年間1000万人前後(2022年はおよそ900万人)もの人々がハワイを訪れているが、その人々の多くにも、おそらく知られていないであろう事柄がある。それは、「ワイキキ」という地名の意味だ。
ハワイ語ではWaikīkīと書く(実際の発音は「ワイキーキー」)。ワイは「真水」、キーキーは「湧き出る」、つまり「湧き水」という意味だ。なぜそのような地名が付いたのか。

現在「ワイキキ」と呼ばれる場所は、長く連なるビーチ、L字型をしたアラワイ運河、ダイヤモンドヘッド前に広がるカピオラニ・パークに囲まれた、およそ2.4平方キロメートルのエリアを指す。一帯はビルが密集している。それに対して古代におけるワイキキは、ビーチから内陸奥地に広がるコオラウ山脈の頂上にまで広がり、オアフ島南東部の大部分を占める、巨大な土地区分の一つだった。


北東から吹きつける貿易風が、オアフ島を南北に走るコオラウ山脈に当たることで雲が生まれ、山脈の頂上から裾野にかけて、多くの雨をもたらす。その雨は川となり、また、地下深く染み込み、海に向かって流れていく。ワイキキは、山に降り注いだ雨水が流れ込み、そして、その名が示す通り、真水が地下から湧き出る場所だったのだ。
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