モノとモノの関係性で世の中を捉える

 次に紹介するのは、米国の哲学者ハーマンの「OOO(トリプルオー)」です。Object-Oriented Ontologyの略で、オブジェクト指向存在論などと訳されます。一言でいうと、人間抜きにモノとモノの関係性で世の中を捉える考え方です。

 普段私たちは、人間、とりわけ自分を中心に世の中や状況を捉えます。ハーマンは決してモノ同士が会話したり、コミュニケーションを取ったりしているとは言いませんが、実際にモノ同士でも関係性は成り立ちます。モノとモノの関係だけで状況を記述するのは十分可能なのです。

 例えば、私たちにとって箸と茶わんの関係は、ご飯を食べるためのひとそろいの道具にすぎませんよね。けれども、箸と茶わんにしてみれば、食べ物を介して触れ合う関係とも言えるのです。

世界の外側には捉えきれないものがある

 最後に、フランスの哲学者ラリュエルの「非哲学」を紹介しましょう。ラリュエルに言わせると、この世界の外側には、常に「一者(いっしゃ)」と呼ばれる外部が存在します。哲学とは、物事の本質を捉えようとする営みですが、どうしても捉えきれないものもある。それを「一者」と呼んだのです。いわば人間にとって想定外の事柄です。そんな「一者」は哲学で捉えられないので、非哲学が必要だというわけです。

 「非哲学」とは一体何なのか。簡単に説明すると、「常に外側に何かあると思え」ということ。あらかじめすべてを包含する全貌など、ないのです。

 さて、これら3つの哲学を応用すると、物事はどのように捉え直せるでしょうか。一つお題を出すので考えてみてください。

 人間の活動が引き起こしている気候変動により、地球は徐々にむしばまれている。この「一般的な状況」は、3つの哲学を使うとどう捉えられるだろうか。

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