「1・2・3、ダァーッ!」「元気ですかー? 元気があればなんでもできる」は、人気プロレスラーで政治家でもあった故アントニオ猪木氏の名文句だ。そんな元気さえなくなってしまう原因の一つとして挙げられる「ストレス」。日常を脅かす、このストレスという名の敵との闘いにどう挑めばよいのか。日本生理人類学会の会長でもある九州大学安河内朗名誉教授に、ヒントを聞いた。

 私ごとで恐縮だが、私・結城未来は時折、ストレスに「ヘッドロック」されたような気分になる。

 「ヘッドロック」とは、相手の頭を脇に抱えて締め上げる、プロレスの試合序盤に見られることが多い有名な技だ。ストレス過剰になると、鬼の格好をしたストレスに締め上げられたかのごとく、息苦しくなってくるのだ。

九州大学・安河内朗名誉教授(以下、安河内教授):そこまでストレスがかかるのはお気の毒ですね。ストレスの「抵抗期」で闘いを続けているのでしょう。長く続くようでしたら、「疲弊期」に入る前に対策が必要ですね。

「抵抗期」「疲弊期」とは、ストレスのレベルなのだろうか?

安河内教授:そうです。ストレスにも、怒りや不安などの精神面、疾病、外傷、寒冷などさまざまなものがあります。外部からこういった刺激を受けると、人間はそれに適応しようとして体が反応します。生理学者のハンス・セリエによると、3段階の反応期があります。

セリエのストレス学説

第1段階「警告反応期」:ストレスを受けた直後の数分から1日程度はショック状態に。血圧や血糖値の低下、筋緊張の抑制などが見られる。続いて一時的なショック状態から血圧や血糖値も戻り、ストレスに適応しようとする反応が始まる。

第2段階「抵抗期」:ストレスに抵抗し続けている状態。この時期までにストレス要因が弱まったり取り除かれたりすれば、回復して健康状態を取り戻せる。

第3段階「疲弊期」:適応のためのエネルギーが枯渇してしまい、抵抗力が衰える危険な状態。

安河内教授:例えば、SNS(交流サイト)で複数の嫌がらせの投稿が寄せられたとしましょう。まず、数分から1日は嫌がらせに対してショック状態になります。自律神経系のバランスが崩れ、体調不良につながりがちです。

 しかし、1日程度過ぎれば、心身はこのストレスに対する適応反応を始めます。初日のショックが薄らいで、嫌な気持ちが少し軽減されていきます。これが、第1段階の「警告反応期」。

 SNSでの嫌がらせが続いてしまうと、エネルギーを使ってあらがい耐え続ける状態・第2段階の「抵抗期」へ。

 このストレスがさらに数カ月かそれ以上続くと、抵抗するためのエネルギーも弱まり、ついには何らかの形で破綻。第3段階の危険な「疲弊期」に突入してしまうことになるのです。

どうやら、私はストレスとの闘いに挑んでいる最中ということらしい。同様につらく感じる人の多くが「抵抗期」でストレスにあらがうべく、頑張っているということだろうか。

安河内教授:ストレス刺激を受け続けても、それほどストレスを感じない人もいます。逆に、過敏な人は早い段階で「疲弊期」に突入しがちです。対象となるストレス刺激が弱まるか消えれば元の状態へ回復できます。

 また、結城さんのように物事を前向きに考えられる人は、「抵抗期」の中でストレスと戦っていても、それほど時間をかけずに抜け出せることも少なくありません。

確かに私の場合、「つらい」と感じたら、いつもより早く就寝しグッスリと眠るなど、自分なりの解消法で乗り切っている。

 そうは言っても、鬼の格好をしたストレスにヘッドロックされた状態は、誰でもつらいものだ。ストレスがない世界になれば、幸せに感じる人も少なくないだろう。

安河内教授:本当にストレスは不要なものだと思っています? 人間は「刺激」がなければ、「ないこと自体がストレス」になります。

「ストレスがないこと自体がストレス」とは、どういうことだろうか?

安河内教授:「適度な刺激」があれば、それが人生の活性剤になります。ストレスは「必要悪」でもあるのですよ。

「楽しめる程度のストレス」なら、自分の成長にもつながりそうだ。

次ページ 個人主義社会に対して無意識に嫌悪、それがストレス