トライアスロンを社会学の視点で考察する連載「大人のトライアスロン」。初回(忙しい人ほどハマる? 大人のトライアスロンには何があるのか)は、トライアスロン会場だけにある幸福感について説明しました。主に30代以降のビジネスパーソンを想定して書いており、想定読者の一人はかつての私自身です。今お読みのあなたにとっても手触り感ある情報となればうれしいです。おかげさまで記事公開時には週間ランキングで上位に入り、「参考になった投票」も多くいただけました。コメントにもお答えしましたのでお読みください。
「日常性を大きく逸脱してはいるが、基本的には人の道に反していない行為」
トライアスロンをする著名人の一人に、作家の村上春樹さんがいます。専業小説家となった翌年の33歳からランニングを始め、以後マラソンやトライアスロン大会に参加し続けています。長年にわたり多様なテーマの長編小説を書き続けるために、走ること、大会に参加することは、村上さんにとって必要不可欠な生活習慣となっており、著書で詳しく語られています。
そんな村上さんは長距離スポーツへの参加について、「日常性を大きく逸脱してはいるが、基本的には人の道に反していない行為」と2007年の自伝的エッセー『走ることについて語るときに僕の語ること』で表現しています。私も自転車を始めた頃に熟読し、「確かに今ここに非日常はある!」と共感したフレーズです。
自然の中で長時間にわたり自分の力を試すことで、日常にはない特別な体験をすることができますが、ヒマラヤ登山のように何週間も社会生活から離れる必要はありません。日常生活の中で準備し、週末に完結できるコンビニエントな冒険ではありますが、己の体の限界に対する冒険に限界はありません。
トライアスロンの「コスパ」
しかし、こうしたロマンあふれる説明を聞いて、「それコスパ悪くない?」と思わず反応してしまうのが現代人ではないでしょうか。実は私もそうでした。「コスパ=投入する各種コストに見合うパフォーマンスはあるのか?」「そんなハードなことをすれば体に悪いのでは?」「どんな危険性があり得るのか」「やり過ぎゾーンはどこからか」といった疑問は、私が自転車にハマり始めた15年前から気になり、情報収集し続けてきました。
今回は、そんなトライアスロン参加に伴うコストとリスクについて考えます。まずは全体像を把握してみましょう。
スポーツにはさまざまなリソースが投入されます。それらをコストと捉えると、
- (1)お金
- (2)練習時間
- (3)精神的エネルギー
に大別できるでしょう。
さらに、不確実だが発生可能性のある事象、つまり、リスクがあります。そこで、
- (4)想定外のリスク
- (4-a)短期では「事故」など
- (4-b)中長期ではやり過ぎによる「想定外の健康ダメージ」
も隠れたコストとして算入しましょう。やり過ぎという側面では、仕事の破綻や家庭崩壊などをもたらす「社会的ダメージ」というリスクも考えられますが、今回は健康ダメージについて考察していきます。
コストとリスクを図に整理してみました。他にもこんなリスクがあるよ、コストがかかるよ、など、抜け漏れがありましたら、ぜひコメントで教えてください。
こうしたマイナス面としてのコストとリスクをきちんと理解して、それを上回るプラス面の魅力を上げることができると、コスパが高いと言えるはずです。
Powered by リゾーム?