コロナの影響で保険の出願

 志願者数の減少が予想された理由は他にもある。それは、22年に実施された共通テストが難化したことだ。22年の共通テストでは、多くの科目で平均点が下がった。数学Ⅰ・数学Aや数学Ⅱ・数学B、日本史B、生物などでは、平均点が前年を10点以上下回った。

 大学入学共通テスト問題評価・分析委員会では、高校の教科担当教員で構成する外部評価分科会によって、試験問題が適切であったかどうかの評価を実施している。総合評価に加えて、出題のねらいや、出題範囲、問題構成、難易度などの8項目それぞれについて、適切かどうかを4段階で評価する。4段階の内訳は、適切と評価される順に「あてはまる」の4、「ある程度あてはまる」の3、「あまりあてはまらない」の2、「あてはまらない」の1となっている。

 全体の中で、難易度について「あまりあてはまらない」の2と評価された教科が2つあった。それは、平均点が前年の39.11点から21.89点に下がった数学Ⅰと、同じく57.68点から37.96点まで大幅に下がった数学Ⅰ・数学Aだ。

 どちらも難易度については「作成方針に即した思考力・判断・表現力等を求める設問は時間に比して多く、計算量の多い設問も散見された。そのため総合的にみると解答時間に余裕がなくなった受験者が多いことが推察される」と指摘された。

 このように、前回の共通テストでは難化が注目されたが、その影響は志願者数には表れなかった。志願者数について井沢氏は次のように分析する。

 「おそらく、今回に関しては新型コロナウイルスの感染が収まっていないこともあり、私立大学志願者も保険をかける意味で出願をしたのでしょう。ただ、年内入試で合格していれば共通テストは受験しませんので、欠席率が高くなるのではないでしょうか」

難易度は変わらず、平均点は上昇の可能性も

 では、23年の平均点はどうなるのだろうか。もちろん、各教科ともどのような問題なのかは見てみなければ分からないが、前回、前々回で出題された傾向と、それほど変わらないことが予想される。

 共通テストは大学入試改革の一環として、21年に初めて実施された。初めての共通テストでは、すべての科目でそれまでのセンター試験とは明らかに異なる傾向が見られた。それは、読解の分量が増えるとともに、時間内に読み解かなければならない分量の負担が増えたことだ。

 この年、英語はリーディングのすべての問題が読解問題に変わり、国語は問題文とは別の文章や資料を参照して解答するなど、総合的に考えて解答する問題が増えた。そして数学は、前提となる文章や問いの文章が長くなった。必要な情報を素早く読み取る力が要求されるようになったのだ。

 22年の数学では、この傾向がさらに顕著になった。センター試験よりも試験時間が長くなっているものの、それ以上に問題のページ数が大幅に増えている。23年も読解力重視と、資料から読み解く出題形式が主流であることは変わらないだろう。

 一方で、共通テストが2回実施されたことで、ある程度傾向も分かってきて、学校や塾で対策がしやすくなったことは間違いない。英語に関しては1回目の共通テストから大きく傾向が変わったと前述したが、2回目の22年は平均点が上がっている。

 ただ、平均点は最終的な受験者数によって変わってくる面もある。欠席者が多くなると、上位層の割合が高くなるので、平均点が上がる可能性はある。

 いずれにしても、受験生にとっては共通テストが「時間との戦い」になることは23年も同じだろう。易化することはないにしても、対策をしていれば、受験生にとって志願者数の減少による影響はないと考えられる。

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