大都市圏の難関私立大学は、ここ数年、定員厳格化の影響によって大量の繰り上げ合格者が出ている。ただ、2022年度入試では多くの大学で繰り上げ合格者数が前年度より減少。6月には国が定員厳格化の緩和を決めたことによって、23年度の難関私立大学入試ではさらに繰り上げ合格者が減り、「当初合格者」が増加する可能性が出てきた。主要大学の合格発表について現状を分析しながら、23年度入試の見通しを探ってみたい。
多くの大学で繰り上げ合格者が減少に転じた
難関私立大学では、国が16年度から実施している定員厳格化の影響で、各大学の合格発表が出そろった3月になって、大量の繰り上げ合格者が出る状況が続いている。
各大学は入学辞退者が出ることを踏まえて、当初合格者数を決める。併せて、入学定員に対する入学者数を基準内に収めなくてはならないため、当初合格者数を少なめにして、辞退者の数に応じて繰り上げ合格を出すという実情があった。
ただ、22年度入試になり、繰り上げ合格の増加傾向に変化が起きたという。大学入試に関する研究や情報提供を行っている大学通信(東京・千代田)が調査した繰り上げ合格者数を見ていただきたい。
首都圏の私立大学では、22年度は、一転して繰り上げ合格者が減少している。表の右側が21年度から22年度の当初合格者数、繰り上げ合格者数、最終合格者数を比較したものだ。
早稲田大の場合、前年度は最終合格者の1割強が繰り上げ合格者だったが、今年度は675人減少したことで繰り上げ合格者が占める割合は減少した。
上智大は繰り上げ合格者数が今年度2266人と、大学の規模から考えると依然として多いものの、最終合格者数の半分近くを占めていた前年度に比べると、759人減少している。この表で繰り上げ合格者数が増えているのは、慶応義塾大と法政大だけだ。
さらに、当初合格者数を見ると、21年度と22年度の差に驚くのではないだろうか。全ての大学で22年度は当初合格者数が21年度に比べて大幅に増加。早稲田大が1164人、上智大が1136人増加しているほか、明治大は2953人、法政大は2271人、東洋大は4360人と極端に増えていることが分かる。
次に、関西圏の大学についても見ていきたい。
この表に掲載している全ての大学で、当初合格者が増加し、繰り上げ合格者が減少した。21年度と比較して22年度の当初合格者数は関西大が2210人、関西学院大が4262人、近畿大が2761人と、やはり大幅に増えている。首都圏、関西圏の大学ともに、前年度よりも多めに当初合格者を出したことになる。
22年度入試で繰り上げ合格者数が減少したのは、当初合格者数をどれくらい出せるのかを見極めるノウハウが各大学に蓄積してきたからではないかと考えられる。その結果、繰り上げ合格者数の増加は、22年度入試で一定の歯止めがかかったのではないだろうか。
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