全国の大学でここ数年新設が相次いでいるのが、データサイエンス系の学部や学科だ。令和5(2023)年4月には国公立の一橋大学と名古屋市立大学のほか、私立大学を含めると約10の大学で新設される。
データサイエンス系は「文理融合」の学問。大学によって配点や受験科目は異なるものの、入試は文系と理系の受験生がどちらでも受けられるケースが多い。一方で、他の学部に比べて募集人員が少ないなど、現状では「狭き門」ととらえている受験生も多いのではないだろうか。
新設の学部と学科を中心に、データサイエンス系の入試動向について取材した。
一橋大学で72年ぶりの新設学部
難関国立大学の一橋大学が、令和5年4月に開設するのがソーシャル・データサイエンス学部。昭和26(1951)年に商学部、経済学部、法学部、社会学部の4学部体制になって以来、72年ぶりに新設される学部として注目されている。併せて、大学院である研究科も新設される。「社会科学の総合大学」を掲げてきた一橋大学にとって、理系の要素が強い学部と研究科ができるのは初めてのことだ。
一橋大学ではソーシャル・データサイエンス学部と研究科に迎えたい学生像を、「一橋大学HQウェブマガジン」で次のように明らかにしている。
「まず問われるのは、基礎力としての数学の素養です。データサイエンスには統計や計算が不可欠であり、数学を避けて通ることはできません。得意ではなくても、アレルギーがない、嫌いではないことは最低条件でしょう」(一橋大学HQウェブマガジン「求める学生像と、入試の特徴」10月3日掲載)

この考えは入試に反映されている。ソーシャル・データサイエンス学部の一般選抜は、前期日程と後期日程で実施される。
前期日程の募集人数は30人。配点は大学入学共通テストが240点で、第2次試験は760点。第2次試験では数学が330点と最も配点が高く、英語が230点、国語が100点、それに配点100点の総合問題がある。総合問題は「社会において数理的なものの考え方を応用する力、情報技術の活用について自ら試行する姿勢を確認するための科目」と説明され、ホームページでサンプル問題が公開されている。
一方、後期日程の募集人数は25人。大学入学共通テストが200点なのに対し、第2次試験が800点で、第2次試験は数学が500点、英語が300点となっている。数学は配点が高いだけではなく、理系を選択した受験生が学ぶ「数学III」の範囲からも選択科目として出題される。つまり、理系の受験生が受けやすいということだ。
一橋大学では経済学部の後期日程でも「数III」の問題を選択できる入試方式をとっている。入試課は「いわゆる文系、理系と区別した募集はしていません。数IIIを入れることで、文系、理系関係なく、科目選択がしやすくなっていると考えています」と話している。
大学入試などについて独自の調査・分析を行っている「大学通信」情報調査・編集部の井沢秀部長は、一橋大学ソーシャル・データサイエンス学部の入試について次のように予想している。
「前期日程は総合問題があるために、理系を選択している受験生は対策が難しく、受けづらいかもしれません。一方で、後期日程には理系の受験生が多く出願するのではないでしょうか。
国立の難関大学は後期日程を実施している大学が少ないことに加えて、前期日程で東京工業大学などを受験した理系の学生の受け皿になる可能性があります。いずれにしても募集人員も少ないので、入試の難易度が高くなるのは間違いないでしょう」
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