グローバル施策を進めるAPU

 給付型奨学金以外に、ユニークな支援を今年度から実施する大学が、大分県別府市の立命館アジア太平洋大学(APU)だ。最大の特徴は学生の半数を国際学生(留学生)が占めること。2000年の開学以来、延べ161の国と地域から学生が入学し、現在も94の国と地域の学生が在籍している。

国際学生と国内学生が半数ずつを占める国際系の大学、立命館アジア太平洋大学(APU)
国際学生と国内学生が半数ずつを占める国際系の大学、立命館アジア太平洋大学(APU)

 大学には国際経営学部とアジア太平洋学部があり、今年8月に来年度からのサステイナビリティ観光学部の新設と大学の定員増加が認可された。併せて進められているのが、新たな学生寮の建設だ。

 APUは、温泉で有名な観光地の別府市の街並みと、別府湾を見下ろす高台にある。隣接地に開学当時から開設されているのが、国際教育寮の「APハウス」。国際学生の1回生は原則として全員入寮し、ごみの出し方など日本の生活習慣などを知ってもらう。そのうえで2年目から民間のアパートなどで暮らすことになる。

 この「APハウス」は、国内学生にとっても、異文化を体験できる場所になっている。国内学生も希望者は1年間入寮し、国際学生と一緒に生活できる。部屋数の関係などでこれまでは国内学生の約8割が上限だったが、増設によって、来年度からは国内学生の希望者全員が入寮できることになった。

学生寮の「APハウス」。国際学生の1回生は全員入寮し、国内学生も希望者は1年間入寮できる
学生寮の「APハウス」。国際学生の1回生は全員入寮し、国内学生も希望者は1年間入寮できる

 そこでAPUが新たに打ち出したのが、国内学生の寮費減免制度だ。

経済難の国内学生に寮費を半額負担

 寮費減免制度は、APハウスに入寮する11カ月分の寮費の半額を免除するもの。寮費には住居費、共益費、水道光熱費、寝具レンタル費などが含まれる。減免を受けられるのは日本学生支援機構(JASSO)の給付奨学金受給者で、経済的に厳しい家庭の学生から順番に最大60人を対象にする。この制度の狙いを、アドミッションズ・オフィス事務局次長の折田章宏氏は次のように説明する。

 「寮費が年間60万円ほどかかるため、家賃の安いところに下宿する学生もいます。自宅から通う学生も寮には入らないことが多いです。しかし、それでは多文化共生を学ぶ機会の一つが失われてしまいます。寮費がネックで受験自体を諦めている学生もいると思います。寮費減免制度は、経済的に厳しくても多文化共生を学べるチャンスと捉えていただきたいですね」

 コロナ禍では全国的に国際系の大学や学部の志願者が減少した。APUでも国内の一般入試の志願者はコロナ禍前より減少している。その一方で、国際学生の志願者はそれほど減っていない。今年3月の入国規制緩和を受けて国際学生が入国し、APハウスに入居している。一方で、コロナ禍で母国に帰れなかった在籍中の国際学生はAPハウスに滞在していた。コロナ禍でも異文化を体験できる環境は保たれていた。

 寮費の減免制度は来年度の入学生から4年間実施される。加えて、優秀な成績で入学した国内学生の授業料を免除する「国内優秀者育英奨学金制度」を拡充する。これまでは最大で授業料の半額を減免していたが、全額免除となる。

 対象となるのは全ての入試方式による入学者で、英語検定試験の結果も審査する。1学年あたり上位5%の学生に支給する予定だ。学生への支援制度を拡充した背景について、折田氏は「世界でリーダーになれる人材を育てたい」と意気込む。

 「コロナ禍の2年間で志願者は減っていますが、グローバルの分野を学びたいと考えているコアな層はそれほど減っていないと感じています。全国の都道府県で、最も多く学生が来ているのは東京都からです。首都圏にも国際系の大学はありますが、国内学生が国際学生と一緒に寮に住み、ほぼ24時間生活を共にできる環境は、ほかにはないのではないでしょうか。

 大学では30年に向けて『APUで学んだ人たちが世界を変える』というビジョンを掲げています。世界を変えられるのは、理論だけでなく実践もできる人です。国内学生、国際学生ともにAPUの学びを代表するような人が入学し、グローバルな環境でリーダーシップを発揮してもらいたいですね」(折田氏)


 2つの大学が新たに打ち出した支援制度は、志願者を増やすことを目的にしているわけではない。芝浦工大は日本の科学技術の将来に危機感を抱いて、地方学生や女子学生など多様性のある人材を育てようとしている。APUは、コロナ禍での経済状況の悪化でためらいがちな国際系大学への進学を支援し、世界をリードする人材を育成したいと考えている。国の動きとも併せて、ターゲットを絞った給付型奨学金などの支援は、今後も広がっていきそうだ。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「令和の大学入試事情」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。