国立高等専門学校(以下、高専)の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学していることをご存じだろうか。高専は15歳から5年間一貫の技術者教育を行って、高度な専門性を持つ学生を輩出することを重要なミッションにしている。1962年から各地で設置が始まり、2022年度は高専制度創設60周年の節目の年。現在は全国に51校がある。
30年ほど前は、卒業生の7割から8割はそのまま就職していた。それが、ここ20年は就職が6割、進学が4割となっていて、東京大学をはじめとする難関国立大学に編入する学生も少なくない。理系人材が求められる中で、大学側も受け入れ体制を整えている。高専生の進学状況について見ていきたい。
東大18人、東工大26人など国立大学に多数編入
高専は全国に51校あり、1学年に9000人以上が学んでいる。中学校を卒業して高専に入学した学生は、5年間の一貫教育によって一般的な教養と共に産業界で活躍できる専門的な知識や技術を身に付ける。

高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ。
ここで、2021年4月に、全国の高専51校から主な大学に編入した実数を見てみたい。
300人以上を受け入れているのが、豊橋技術科学大学と長岡技術科学大学。高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学だ。高専からの編入が1学年の約8割を占めている。
それ以外の大学を見ると、国立大学が多いことが分かる。東京大学には18人、東京工業大学には26人が編入しているほか、旧帝大でも九州大学の57人をはじめ多くの編入生を受け入れている。
編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる。
大学入試に臨むのであれば、受験勉強をする必要がある。それが、高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ。
国立大学が高専生の受け入れを増やしてきた一方で、私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。
私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか。
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