精神科医Tomyの「心のコリを解きほぐそう」。さまざまな悩みに向き合う連載の第2回のテーマは「世間体」です。世間の目を気にして、本来の意思とは違う選択をしていませんか? 「40代独身は世間の目が気になる」という男性の悩みに、Tomy先生が答えます。

「世間体」という厄介なものがあります。
「世間がこう言っているから……」
「世間の目が気になるから……」
そんな言い方をする人がよくいます。
でも、考えてみてください。「世間」って誰ですか?
「世間が……」と言っている場合、たいていは自分が思っていることなんです。「みんなが言っているから」と言う人もいますね。それも同じです。
例えば、「世間的に、大学まで卒業していないと恥ずかしい」。「40代で独身だと世間の目が気になる」。この場合、たいていは“自分”が恥ずかしいと思ったり気にしたりしているんですよ。「世間」と口走りそうになったときは、「それは誰?」と考えて、主語を明確にしてみてほしいなと思います。それは自分だったり、近所の人だったり、親戚だったり、必ず特定の誰かが存在するはずです。
「若いうちに結婚しておけばよかった」
今回、悩みを打ち明けてくれた41歳のエンジニア、まことさん(仮名)も、「世間」の存在に惑わされている1人でした。
30代前半、まことさんには交際していた年下のパートナーがいたのですが、彼女が30代に差し掛かるにあたり、「結婚したい」と告げられます。彼女のことは好きだったけれど、その当時のまことさんは、どうしても誰かと一緒に生活するイメージが湧きませんでした。結果的に、お別れすることになったのです。
その後、何人か恋人はできましたが、関係はいつも半年から1年くらいしか続きません。気が付けばまことさんは40歳になっていました。
「1人の生活は楽しく快適で、独身のまま人生を終えてもいいかなと思っていた」と話すまことさんですが、そこにやってきたのが新型コロナウイルス禍です。自由に出かけたり、気軽に友人を誘ったりすることが難しくなりました。同世代の友人や同僚は、家庭を持ち、おうち時間を満喫しているように見えます。
さらに、まことさんの父親が体調を崩し、入院することに。介護の問題が一気に現実のものとなり、まことさんは「やはり結婚したほうがいいのではないか?」と考えるようになりました。
早速はやりのマッチングアプリに登録して何人かの女性に会ってみました。しかし、なかなか進展しません。
まことさんは言いました。
「女性に選ばれないのは、40代で独身だからでしょうか。世間的に何かしら問題があると見られているのではないかと気になり始めると、同僚や友人からそんなふうに見られているのではないか、と疑心暗鬼になってしまいます。こんなことなら、若いうちに、勢いに任せて結婚しておけばよかったです!」
Powered by リゾーム?