企業が顧客に届けるのは商品やサービスではなく、コンセプト。ではコンセプト作りと、それを最適に運ぶ作業で大切なことは何か。名写真家の仕事術から学び、ここ3年の大問題をテーマにしたワークで体得しよう。
(イラスト:西アズナブル)
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(イラスト:西アズナブル)

 前回、かなり頭を揺さぶるような話を書きました。

 会話、文章、絵や写真や音楽……。表現手段は多種多様にありますが、それらは全部、ただの乗り物でしかなく、そこに「コンセプト」を積んで、受け手に運んでいるのだ、と。

 この続きの「ビジネスも同じで、商品やサービスは『乗り物』でしかなく、そこにコンセプトを載せて運んでいる」という話。これにはさらに違和感が募ったことでしょう。その事例として、電子手帳とスマホの違い、そして、回転寿司業界のV字回復を書きました。いずれも、「コンセプト」にまつわる話です。

商品やサービスは「乗り物」だ

×商品やサービスを届ける
〇商品やサービスは「乗り物」

 日本だと、この「コンセプトとそれをどう運ぶか」というクリエイティブの初歩が理解できない人が多い。商品やサービスは「機能」を提供するのだと思っています。だから、高い技術で実現される機能、顧客の喜ぶ機能、とそんな話ばかりになってしまう。機能だけでは旗色がよくないと分かると、今度は「付加価値」なんて言葉を使いがちです。ただ、コンセプトとそれらは全く違う。この違いが理解されにくいのです。

 何度も同じ話を書いて恐縮ですが、電子手帳に「携帯電話機能」を載せれば、それは「スマホ」になっていたでしょうか? いいえ。ありえません。「ビジネスパーソンを楽にする」というコンセプトのままだったら、映画や音楽、ゲームなどを載せる世界観とは異なる。そんな旧態依然とした考え方だったら、プラットフォームとして多様なプログラム製作者が日々、アプリやソフトを開発し合うこともないでしょう。あくまでも、ビジネスパーソン用に、「少数の」アプリを、メーカー自ら提供して儲けるという小さなアーキテクチャでしかないのです。

 スマホは「携帯コンピュータが人々の生活を変える」がコンセプトだったから、全く異なる軌道をたどったわけです。 これも繰り返しになりますが、ツイッターには、他のSNSのような高機能はありません。それでも日本一利用者が多いSNSであり、全世界で年間6000億円を売り上げるビッグビジネスとなっています。そこには「今、この気持ちを、世界に」というコンセプトがあり、それを忠実に守り続けている。だからすぐ書ける文字数に制限し続け、コンプラ的に問題が叫ばれても匿名厳守で通しています。

 会社はユーザーにコンセプトを届けている。「商品」や「サービス」、店舗デザインや接客作法などが、一体となってコンセプトを具現化しているのだと、ぜひ、思考のコペルニクス的転回をしてください。

 会議や営業活動など細事に至るまでこの転換が行えれば、コンセプトワークに強い集団が出来上がります。そのうえで、CI(コーポレート・アイデンティティ)など企業全体のブランドコミットメントを作れば、会社の進む道は明確になる。現在のCIは逆に「上からの」押し付けだから、おためごかしなお題目に堕するのです。

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