技術もアイデアも豊かな日本がなぜ長期低落しているのか。それは「クリエイティブ」でないから。ではクリエイティブの本質とは? 人事のカリスマ海老原嗣生氏が新境地を開拓、マーケティングの難題に挑む。
(イラスト:西アズナブル)
(イラスト:西アズナブル)

考えてみると、ツイッターってほんとにプアなサービス……

 ツイッターという会社を知らない人はまずいないでしょう。この会社が提供する「つぶやき」サービスは、広告収入などで、年間6000億円ほどの収益を上げています。

 これほど大きなビジネスなのに、ツイッターが提供している機能は、かなりプアなものです。

・記載できる文字数は少ない
・画像や動画のアップにも制限がある
・相互コミュニケーション機能も脆弱
・電子マネーはおろか、カード決済機能もない
・匿名なので、他サイト会員になる時の認証機能も果たせない

 明らかにフェイスブックやLine、Noteなどのライバルからは数段劣っているでしょう。それなのに、同社は修正を加えようとしていません。

 ツイッターは匿名のため、ネットバッシングなどの諍いが絶えず、自殺に追い込まれてしまったユーザーすら多数おり、社会問題にもなっています。にもかかわらず、匿名性にも手を付けておりません。

 こんな突っ込みどころ満載のサービスなのに、全世界では4億人近いユーザーがおり、日本でもその数は3300万人で、国内で使われるSNSとしては圧倒的な1位。サービスも技術も秀でていないのに、ビッグビジネスとなっているというこの事実。

(イラスト:西アズナブル)
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(イラスト:西アズナブル)

 そもそも、「つぶやき」という行為は、世の多くの中の人が、生まれてこの方、何度も経験したことに過ぎません。誰も知らない斬新な発想とは言えないでしょう。単に、「目の付け所の良さ」から始まったビジネスです。それだけで、世界を動かす存在にまでなっている。

 いったい、ビジネスで勝つために必要なこととは、何なのでしょう?

 それを明かす前に、もう一つ、大成功したビジネス事例を考えることにいたしましょう。

30年も昔にスマホと同じものを多くの日本人が使っていた!のに

 20世紀にはなかったのに、21世紀になると早々に世に出て社会を変えたエポックに、「スマホ」が上げられます。このことに異論をはさむ人はまずいないでしょう。

 このガジェットとほぼ同じ大きさ、同じ機能、同じ価格帯のビジネスツールが、実は1990年代に生まれていて、なかでも日本では広く浸透していたのをご存じですか。スマホに先立つこと10年以上前の話となります。

 それは、「電子手帳(PDA)」と呼ばれていました。40代中盤以上の読者なら覚えている人も多いでしょう。シャープなら「ザウルス」、ソニーなら「クリエ」などが有名で、当時、ビジネスパーソンの3割以上に普及していたといわれています。

 その機能は、スケジュール管理、連絡先管理、辞書、メモ帳、そして、インターネット閲覧や赤外線による無線通信でのデータ交換など多岐にわたり、スタイラスペンや指でも操作が可能。形も大きさも機能もスマホと何ら変わりません。それが、日本でははるかに昔から浸透していた! このPDAに「携帯電話ソフト」を入れて通話機能を付加したら、それはもうスマホと何ら変わらなかったはずです。それでもPDAは、「スマホ」になれなかった……。

 これはどうしてでしょう? 技術、デザイン、仕組み、機能…すべて同じなのに、PDAとスマホで、これほど大きな差がついてしまった理由。それこそ、ビジネスを考え、そして創り、育てていくうえで一番大切なことだと言っても過言ではないでしょう。

 それは、機能・筐体は似ていても、PDAとスマホでは、「コンセプト」が大きく異なったから。この「目に見えないうさんくさい言葉」次第で、ビジネスのポテンシャルが大きく変わってしまうということに、多くの日本人は気づいておりません。コンセプトというものを「雰囲気」とか「お題目」だと勘違いしている人が多いのではないでしょうか。

 だから、良い技術と発想を持ち、人々が惜しまず労働を続けても、日本企業の旗色は一向に好転しなかったのです。

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