前回掲載した「なぜ頑張ってもアイデアは浮かんでこないのか」では、アイデア出しのいい例・悪い例についてご紹介しましたね。今回から、頭と手を動かすパートに入ります。まずは、「実際にアイデアを出していく方法(初級編)」というテーマの内容になっていますので気軽に試してみてください。

素晴らしいアイデアは、雷のようには落ちてこない

 世界を変える企画、時代を代表する商品。そうした開発者のインタビューや自叙伝には「雷が頭に落ちるようにパッとひらめいた」という表現が散見されます。

 でもその裏側をよく読むと、「ただ天啓のように何かがひらめいた」という例はほとんどありません。常々寝る間も惜しんで何かに打ち込んで、その結果、あるとき突然ひらめきが起こったのです。そこには、たくさんのボツになったアイデアや知られざる努力があり、その部分についてあまり語られずに思いついた場所やきっかけだけが紹介されてしまっている場合が多いのではないかと思います。

 質の高いアイデアを最初から1個だけ思い浮かべようとすると、頭の回転はピタッと止まってしまいます。100点満点だとしたら50点、むしろ10点くらいのくだらないアイデアをたくさん出していくことからヒットするアイデアは浮かんでくるものです。

 ダーツをイメージしてみましょう。アイデアを矢と見立てて、的の中心付近に刺さるほど素晴らしいアイデアになると仮定します。

(画像:PIXTA)
(画像:PIXTA)

 あるビジネスの企画を考えようとしたとき、質の高いアイデアを最初から1個だけ出そうとすると、1回しか矢を投げることができません。ところが、アイデア出しというダーツにおける、投げていい矢の本数は無制限です。従って、たくさん投げ続けることで、いずれ矢の刺さる位置が的の中心に近づいていったり、偶然、的の中心に当たったりします。

 2011年3月ごろまで放送されていたTBS系バラエティー番組『関口宏の東京フレンドパーク』を思い出してみてください。「パジェロ!」「パジェロ!」(三菱自動車が同番組に景品として提供していたSUV=多目的スポーツ車で、番組終盤に実施されていた巨大回転ダーツの高額景品)と外野からプレッシャーを与えられた結果、どれほどのダーツ挑戦者がタワシ(同・巨大回転ダーツにおける最低価格景品)をゲットしてしまったか。

 この番組内においては投げられる矢の本数に限りがありました。しかし、ダーツを「アイデア出し」と見立てた場合には、力加減を強めたり弱めたり、的のいろいろなところを狙ってみたり、あるいは投げ方を変えてみたりと、時間の許す限り、いくらでも投げ続けることができます。

 そしてたくさんアイデアを出し終わった後、ボードの中心付近に刺さっている1本(最も良いと思うアイデア)を選んで、これだと決断すればいいのです。

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