仕事によって社会活動を行う中で、マネジャー以上になると悩む「褒める」と「叱る」の問題。今回は仏教を軸に「正しい部下との接し方」を解説いたします。

佛心宗大叢山福厳寺住職・大愚和尚
佛心宗大叢山福厳寺住職・大愚和尚

 経営者として社員や部下を叱るシーンは当然存在するでしょう。

 私がYouTubeで配信しているお悩み相談の番組、『大愚和尚の一問一答』には、現在2500件を超える相談が届いています。その中には経営者からの相談も少なくありません。特によくあるのが、「社員や部下を褒めたほうがいいのか、叱ったほうがいいのか」という質問です。

 この質問に対する私の結論は、「どっちでもいい」となります。

 なぜ「どっちでもいい」のか?

 それは「褒める」「叱る」よりも「誰に叱られるか、誰に褒められるか」という点が大切だからです。

 社員の立場になって考えてみれば分かります。尊敬できない経営者に叱られても、反発しか感じませんが、尊敬する経営者に叱られれば、社員はその原因や失敗をしないよう肝に銘じます。

 褒められるときも一緒、尊敬する経営者に褒められれば、社員は褒められたことを魂に銘じます。社員は、尊敬する経営者には認められたいと思っていますから、社員を認めた上での「褒め」や「叱り」は、どちらであっても社員に響くのです。

 問題は「褒めるか、叱るか」ではなく、前提として「どうしたら尊敬される経営者になれるのか」ということを考える必要があります。

 経営者自身には「自分が本当に尊敬されているか否か」は分かりませんし、いまどきの社員は、「肩書」だけで経営者を尊敬するわけではありません。

 では、どうしたら「社員から尊敬される経営者」になれるのでしょうか。

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