若者のアルコール離れや外食不況など、逆風が続くアルコール産業だが、近年マーケティングや新需要を武器に、業界に変革をもたらそうとする動きが活発だ。初回は、日本酒のサブスクリプションサービスを紹介する。

新潟の地酒が毎月ポストに届く

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で時短営業などを余儀なくされたことにより、外食産業はここ数年、大きく冷え込んだ。日本フードサービス協会のデータによると、2020年の市場規模は前年比30.7%減の18兆2005億円。21年に入りやや持ち直したとはいえ、依然として状況は厳しい。

 当然ながら「外飲み」する人も大きく減少したものの、その分、「家飲み」需要は増えた。これを好機と捉え、日本酒の新たな楽しみ方を提案するユニークなサブスクリプションサービスが立ち上がっている。

 その1つが、毎月ポストに届く日本酒の定期便、その名も「SAKEPOST(サケポスト)」だ。送られてくる商品は、新潟県を中心とした地域の日本酒3銘柄。月額1210円(消費税10%込み)の「日常酒プラン」と、月額1980円(消費税10%込み)の「吟醸酒プラン」の2つがあり、ともに別途、送料264円(消費税10%込み)がかかる。21年11月にサービスを開始し、利用者は半年で1500人を超えた。

 SAKEPOSTを運営するFARM8(新潟県長岡市)の樺沢敦社長は、津南醸造(新潟県津南町)も経営していて、酒造りにも携わっている。「今まであまり日本酒を飲む機会がなかったけれど、ちょっと試してみたいというライトユーザー層に、新潟の地酒を気軽に楽しんでもらいたかった」と話す。

SAKEPOSTを利用すると、毎月飲みきりサイズの日本酒がランダムで3種類送られてくる
SAKEPOSTを利用すると、毎月飲みきりサイズの日本酒がランダムで3種類送られてくる

 このサービスのポイントは、商品の容量を1人でも無理なく飲みきれる100ミリリットルにしたことだ。「普段、日本酒をあまり飲まない人にとって、コップ1杯(200ミリリットル)すら多いと感じる」からだ(樺沢社長)。

 加えて、軽量でコンパクトなパウチ包装にしたことで、ポスト投函(とうかん)が可能になった。例えば一升瓶の場合、最低でも1000円近くの送料がかかる。だが、これなら送料コストを大幅に削減できるので、サブスクの利用料もリーズナブルに設定できる。樺沢社長は「このパッケージなら海外にも数百円で送れる。次はアジア市場に打って出たい」と意気込む。

 また、パウチに記載された2次元コードからユーザーがお酒の感想を直接酒蔵に送ることができるのも特徴的だ。「問屋経由で感想をもらうことはあっても、ユーザーの声を直に聞くことはほぼなかった。その点、この仕組みなら生の意見が届く上、ユーザーに返信もできる。双方向でやりとりできることで、杜氏(とうじ)や蔵人などつくり手のモチベーション向上につながっている」という。

 SAKEPOSTのサービス開始前は、「サブスクって何?」という酒蔵も多かったが、樺沢社長自身が一つ一つ出向いて協力を求め、今では新潟県内40の酒蔵と提携している。地場企業だからこそ実現できたサービスだろう。

SAKEPOSTでは、ユーザーの生の声が酒蔵に届く
SAKEPOSTでは、ユーザーの生の声が酒蔵に届く

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