個人が受け入れる時間は「一世代=20年くらい」

 ただ、その将来像は社会が故人のデジタルクローンを受け入れるか否かにかかっており、受け入れられるにしてもそれなりの時間がかかるだろう。米倉氏は2つの時間軸をイメージしていると語る。

 「まず個々人が受け入れる時間を考えると、一世代あれば十分だと思います。20年くらいでしょうか。これは自分の実感としてあるんです。

 半年前に脳科学者の茂木健一郎さんのデジタルクローンを生成したのですが、自宅で動かしているのを子供に見せたら、とても自然に受け入れたんですね。うちの子供はあのクローンが茂木さんだと思っているんです。それを見たとき、今日私が死んで明日からデジタルクローンの私が現れても、子供はすっと受け入れてしまうだろうなと思いました。単純に世代交代で全く感覚が変わってしまう」

茂木氏のデジタルクローン(画像:オルツプレスリリースより)
茂木氏のデジタルクローン(画像:オルツプレスリリースより)
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 社会の受容は個々人と比べてはるかに長い時間が必要になると見ている。感情的な受容だけでなく、法的な問題や様々な合意形成が必要になるからだ。

 「デジタルクローンは非常に大きな問題をはらんでいます。私の死後に私のクローンが爆破予告したら、誰の責任に問われるのか。このあたりのことは全然解決していません。

 課題が山積みというところは車の自動運転に似ていますが、あちらは産業的にも社会的にも推し進めなければならない段階に来ているので、責任問題も盛んに研究されています。しかし、デジタルクローンに関してはまだ後回しの状況。そのうえ倫理的な課題は自動運転よりも膨大に発生するので、社会的な受容はそうした事例を一つひとつ解決していった先にあると考えています」

 先に触れた倫理委員会にはそうした社会的な問題と向き合う目的もあるという。タイムスケールは数十年ではなく、数百年のスパンだ。

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