インプットが増えるほど思考パターンが深まる
まずはデジタルクローンの作り方を確認したい。
デジタルクローンを生成する基本的な方法は誰が対象でも変わらない。利用者は対象となる人物の写真や動画、音声、SNS(交流サイト)の文章などを所定の方法でインプットすればいい。すると独自のパーソナル人工知能技術「alt(オルツ)」によって、その人の容姿やしゃべり方、思考パターンなどが再現される仕組みだ。シンプルなクローンなら数十分もあれば生成できるが、その人らしさはインプット量が大きくなるほどに増していく。
「存命の著名人であれば、例えば、テレビ出演の映像や書籍、雑誌のインタビューや近影写真など、情報が多くあります。一般の方でも最近ならSNSの投稿やスマホの自撮り写真などが蓄積しやすくなっています。そうしたデータがたくさん集まるほど解像度が上がっていく構造です」(米倉氏、以下同)
どんなクローンになるのかは投入されるデータの質や量に依存するわけだ。著名人ならパブリックイメージに沿ったクローンが生成されやすいし、日記やLINEでプライベートな情報を大量に残している人なら普段の人となりが再現されやすい。
それは同一人物であっても別のクローンが生まれる可能性があることを示唆している。家族との手紙やLINEをベースにする場合と、仕事仲間とのやり取りやエピソードを中心に投入した場合とでアウトプットに違いが生じるのは当然といえば当然だ。ただ、どの立場で残したデータであっても共通の思考パターンや仕草(しぐさ)は多々見られるはずで、どの道を選んだとしてもインプット量を増やすほどに「その人らしさ」が深まっていくことになる。
それを踏まえて故人のクローン生成を考えると、存命の人に比べて得られるデータに限りや偏りが生じやすいところが懸念材料といえそうだ。紙焼きの写真や手紙、生前のエピソードなどから生成することも可能だが、亡くなった時期が古いほど不利なのは間違いない。そしてもう一つ。当然ではあるが、本人がクローン化に直接協力できない点も気にかかる。誰が許可を与えて、誰が管理すればいいのか。
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