メタバース上で故人のデジタルクローンともコミュニケーションが取れるサービスが開発されている。

 許可は誰が与えて、誰が管理し、行動の責任は誰が取るべきか――?

 デジタル上で故人を再現するビジネスは、まだ誰も踏み込んでいないデリケートな問題が数多く横たわっている。デジタルクローンサービス開発を進めるオルツ(東京・港)は、そうした難題を背負い、草分けとなる覚悟でいる。サービスとしてデジタル故人を実現することの可否や、その行く末を展望してみたい。

実在の人物のクローンのみが活動するメタバース

 2022年4月、メタバース事業などを手がけるメタリアル(旧ロゼッタ/東京・千代田)とデジタルクローン技術を持つオルツは、メタバース空間で実在の人物と対話するサービス『メタリユニア』の開発を公表した。

メタリユニアのイメージ画像(画像:オルツプレスリリースより)
メタリユニアのイメージ画像(画像:オルツプレスリリースより)

 メタリユニアに存在するデジタルクローンはすべて架空の人物ではなく、実在する人物から作られており、それぞれが自律してコミュニケーションを取る。活動するクローンは、現役で活動中の著名人や経営者のほか、歴史上の思想家や偉人、自らのデジタルクローンを作りたい人、そして誰かが再現したい思い出の故人など多岐にわたる。当人の生死やスケジュールとは無関係に、話したい相手と話せるサービスというわけだ。

 6月末にはサービス開始前の最終段階に入っていたので、ローンチは時間の問題と言っていいだろう。まずは著名人のクローンが登場し、それから他のクローンを随時増やしていく計画だ。料金体系はこれから明らかにされる。

 さて、この連載で注目したいのは故人のデジタルクローン=デジタル故人がどのように作られ、どのように運用されるのかという点だ。オルツの取締役副社長を務める米倉豪志氏に尋ねた。

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