AI(人工知能)を研究開発し、社会実装を目指す、クリエイターズネクスト(東京・港)の代表取締役・窪田望氏と、日本大学文理学部助教・次世代社会研究センター長の大澤正彦氏が、前回「GAFAMも追わないところにチャンスが潜む「汎用型AI」とは」に続き、それぞれの観点からAIを語り合う。3回連載の第2回では、AI研究において、日本が世界に勝つために必要な視点について語り合う。

株式会社クリエイターズネクスト 代表取締役
日本大学文理学部情報科学科助教。次世代社会研究センター長
日本のAI研究は海外に比べると後れを取っているともいわれています。お二人はどうお考えでしょうか。
大澤正彦氏(以下、大澤):一般論を言うならば、確かに日本の研究は遅れています。「努力が足りない」「国の政策が悪い」など、いろいろ意見はあります。
ただ、よくいわれる「日本はインターネットの時代に負けて、AIの時代にまた負けた」という表現が、誤解を生んでいるのではないかと僕は考えています。今のAIの、いわゆる機械学習、ディープラーニングといわれるものは、大量のデータを集めて、それを活用して精度を高めていくものです。そのデータはインターネットから集めてくる場合がほとんどです。だから、インターネットの時代に勝ったところが自動的にAIでも勝つような勝負を仕掛けられている、とも考えられるんですね。
全然得意ではない土俵の上に無理やり上げられて、負けていると言われても、それは本質ではない。本質が土俵の上に立っている力士ではなく、土俵にあるのだとしたら、土俵から考えていかないといけない、という問題意識を僕は持っています。
窪田望氏(以下、窪田):その意見に僕も非常に共感します。例えば、GAFAM(グーグル、アップル、メタ=旧フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)は、今、時価総額560兆円ですよね。日本の(旧)東証1部上場企業の時価総額は550兆円なので、日本の大手企業を合わせても、たった5社にかなわないのが現状です。
産業別に見たときに、自動車業界ではEU(欧州連合)が2035年までにEU域内の新車供給をゼロエミッション車(温暖化ガスを排出しない自動車)に限定する方針を打ち出しました。これは、トヨタ自動車の強みであるガソリン車を電気自動車という別の土俵に乗せて脆弱化させたと言えます。つまり、ルールメイキングの競争で負けているんですよね。大澤先生の表現でいうと、「土俵を変えられている」ということだと思います。
日本と比べて欧州は圧倒的にルールメイキングがうまい。強いものと同じ土俵で戦うと負けるのは当たり前です。弱い人が強くなるルール形成競争に、日本はもっと目を向けるべきだと僕は思っています。
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