広告の基本は目立つ・接触機会を増やすこと

 看板を出すことは決めた。ただ、普通の広告であれば街の景観に埋もれてしまう。きぬた院長は「勇気がいる挑戦だったが、顔を出すことにした」と振り返る。その裏には「病院の場所を知るよりも、誰が手術をするのか、誰が責任者なのか患者目線で必要な情報がどちらなのか」という考えもあった。

 自分の顔を出すという気恥ずかしい気持ちはあった。だが、NHKの大バッシングという荒波が打ち寄せた後にビジネスを再構築するため、他の医院がやらないことをやるべきだと思い立ったという。

色や文字フォントなど、どこにあっても目が行く。ごちゃごちゃと地図や付帯情報などは掲載せず、一瞬で頭に入る広告デザインを意図しているという。確かに他の広告と比較すると情報量を極限にまで絞っている
色や文字フォントなど、どこにあっても目が行く。ごちゃごちゃと地図や付帯情報などは掲載せず、一瞬で頭に入る広告デザインを意図しているという。確かに他の広告と比較すると情報量を極限にまで絞っている

 今でこそ、きぬた医院を模倣して顔を大きく打ち出す看板広告は多い。競合の歯科医院で、きぬた歯科のような看板広告を掲げるところも出てきた。「そうした動きは理解しているが、2番手は目立たない。チャールズ・リンドバーグのように、初めて飛行に成功した人が目立つ世界。ぶっちぎりでやった医院に対して後追いでやろうとすると、うち以上にコストがかかる」と自信満々の笑みを浮かべた。

 看板を出すことにより患者が増え、そこで生まれたキャッシュを広告宣伝費に還元する。このサイクルを続け、気づけば300カ所を超える場所に看板が立つようになった。

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