日本企業にとって、米国で事業を展開することは、新しいマーケットを開拓する大きなビジネスチャンスになり得る。直近では、焼き鳥チェーン「鳥貴族」を運営する鳥貴族ホールディングスは2024年7月までにロサンゼルスに出店を、医療データの利活用を支援するYuimedi(ユイメディ)は23年夏に米国の拠点立ち上げを予定している。その一方で、日本を代表する有数の大手企業でさえ、準備不足やトラブルなどにより、短期間で撤退せざるを得ない場合も多い。米国進出を成功させるにはどのような点に留意すればいいのか。米国進出に失敗する日本企業には、共通点があるという。

(写真=PIXTA)
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増える日本企業の米国進出

 「新型コロナウイルス禍に入ったばかりの2020年は、ほとんどの日本企業が米国進出を断念せざるを得なかったが、22年ごろから徐々に問い合わせの件数が増えている」と話すのは、さまざまな日本企業の米国進出をサポートしているDOYA! JapanLLC代表の髙橋佑樹氏。

 「米国進出が増えている背景には、コロナによる渡航制限が緩和されたことだけでなく、円安も影響しています。越境EC事業やD2C事業など、日本から国内外へ商品を販売している企業から、工場や生産拠点を米国に移してドル建てて輸出を行いたいという相談が増えているのです」

DOYA! Japan LLC代表の髙橋佑樹氏。7歳から5年間、シカゴで過ごす。慶応義塾大学法学部を卒業後、2014年に新卒でP&Gジャパンに入社。その後、教育系ベンチャーや起業を経て19年、湘南美容外科の米国法人CEOに就任。これを機に拠点をロサンゼルスに移し、現在は日本企業の米国進出を支援する
DOYA! Japan LLC代表の髙橋佑樹氏。7歳から5年間、シカゴで過ごす。慶応義塾大学法学部を卒業後、2014年に新卒でP&Gジャパンに入社。その後、教育系ベンチャーや起業を経て19年、湘南美容外科の米国法人CEOに就任。これを機に拠点をロサンゼルスに移し、現在は日本企業の米国進出を支援する

 加えて、コロナ禍の外出自粛で巣ごもり需要が増えたことにより日本の漫画・アニメブームが起きたり、健康意識の高まりにより日本食の需要が伸びたりしたことで、これらに関連する事業も米国進出に積極的だという。

 「エンターテインメントの中心地であるロサンゼルスや日本人が集まるカリフォルニアでは、漫画やアニメのブームによって、NFTやVTuberの関連事業にも注目が集まっており、寿司(すし)をはじめとする日本食も、健康的でカロリーが低いというイメージから高い人気を誇っています。

 その他にも、IT企業が集中するサンフランシスコやニューヨークでは、SaaSを中心としたソフトウエア事業を展開する日本企業が増えています」

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