このイベント会社に派遣されて2年がたつ。制作一課の太陽上司は、「働きがいは、人の役に立っていると思えることだ」とよく口にする。本当にそう。私みたいに一般事務のような仕事をしていても、「人の役に立っている」と思うとやはりうれしい。先日、10人分の資料をコピーして、隅をホチキスで留めて太陽上司に持っていった。
太陽上司は、にっこり笑って、「ホチキスが同じ位置にピシッと決まっていて、気持ちいいね。野本さんは、仕事がいつも丁寧だ」と言ってくれた。それだけなのに、仕事がすべて認められたような気持ちになる。
他の人に太陽上司が掛ける言葉を聞いていても、「この企画書、レイアウトがすごくきれいだね。色数が少ないのもオシャレだ」「さっきのメール、ナイスタイミングだった。ありがとう」と、誰かが何かをすれば、すぐに褒める。それも、未来を期待したり、過去と比較したりするようなことはない。「今やったこと」をサッと褒めるだけだから、胃にもたれない。爽やかな風が吹くような感じだ。
以前、太陽上司と子育てについて雑談したことがある。そのときに「私は、上の息子をいつも厳しい言葉で叱っちゃいます。どうすれば太陽上司のように褒められるようになりますか?」と尋ねたら、「おだてず、こびず、心を込めて、その瞬間の行動だけを褒めるように心がけている」と言っていた。だから、太陽上司は「昔に比べて」や「将来こうなるぞ」みたいな褒め方はあまりしないんだ、と感心したことがある。
「親は、子どもの悪い面にばかり気が付く。当たり前だよ。走るのが遅くて、ライオンに食われたら終わりだ。だから『おまえは足が遅い!速く走れ!』というのが親の本能なんだ。でも、悪いところばかり指摘していたら、子どもの自己肯定感は育たない。親が、子どものいいところを見つける努力を、他人の2倍も3倍もして、やっと子どもは『お母さんお父さんが褒めてくれた』と思えるものなんだよ」
なるほど。でも、なかなかできないんだよね。私も太陽上司のように、褒め上手になりたい。息子のいいところ、ちゃんと見てあげなくちゃな。
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