部下にどんな言葉をかければいいか悩んでしまう、上司の言っていることの真意が分からない。同じ日本語を話しているはずなのに、なぜ、伝わらないのか。そんな世代間ギャップに注目し、コミュニケーションのノウハウや言葉の使い方を分かりやすく物語形式で解説したひきたよしあきさんの著書『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)は発売後約2週間で増刷が決定! 今回は同書から、「家庭の事情に悩む部下を勇気づける言葉」を紹介します。
登場人物
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太陽上司(左)
総合イベント会社ホワイトベア制作一課課長。1977年生まれ、45歳。41歳の前厄で腎臓がんを患い、1年間休職。復帰後は、人材育成と新規事業に力を入れている。「彼と話すとなぜか仕事が楽しくなる」「やる気が湧く」と、他部署からも多くの相談が集まる。

岸上蓉子(右)
入社20 年目。中学受験を控えた子どもがいる。

母が倒れ、祖母の介護に子どもの受験…

 母が脳出血で倒れた。幸い命に別条はなかったけれど、足に障害が残ってしまった。母はまだ60代と若い。厄介なことに母は、祖母の介護をしている。その面倒も見られなくなってしまった。実家は千葉なので簡単に行けるといえば、行ける。でも、うちには中学受験を控えた子どもがいる。夫も手伝ってはくれるけれど、正直、戦力不足だ。

 仕事も、ちょっと難しいところにある。リモートワークができるのはありがたいけれど、月末は昔と変わらず、結構遅くまで働かなくてはならない。周囲の目もある。うちの事情は分かってくれるけれど、早退や有給休暇が続くと、口では「大変だね」と言いながら、態度がそっけなくなるのが分かる。

 さすがにきつくなった。時短勤務や介護休業なども考えたけれど、育児休業を取ったとき、会社をしばらく休むのはそれなりに大変なことも経験した。どうしよう。会社を辞めようか。しかし先々のことを考えると、夫ひとりの収入では心もとない。どうしよう、どうしようと悩んで、オフィスの隅にあるリフレッシュコーナーで水を飲んでいたら、太陽上司がやって来た。

 「やあ、元気?」とのんきに言うので、「元気じゃないんですよ」と力なく答える。心配になったのか、太陽上司は、白いパイプ椅子に座り、「何かあった?」と聞いてきた。私は、事の経緯を説明した。

 太陽上司は、しばらく腕を組んで考えていた。そして、いつもの笑顔ではなく、生真面目な顔を私に向け、こう言った。

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