
さあ、採用篇もいよいよ最終回です。今回は「それでも採用できない」という企業に向けて、裏技を披露いたします。まさに、無手勝流の真髄をお見せいたしますね。
中小企業でもM&Aが急増しているワケ
事業が軌道に乗っており、支店や営業所を増やしたいのに、採用がはかどらず、営業所の候補地もなかなかいいところがない。さらに設備を新設・拡充しようにも、業者不足でなかなか工事に対応してもらえない……。こんな風に、「もうかっているのに悩み多き企業」も世の中には少なからずあるでしょう。
が、こうした難局をすいすいとしのいでいる企業があるのです。その秘訣は、M&A(企業の合併・買収)――。M&Aと聞くと、大企業が、新分野や新地域に進出したり、新技術を取り込んだりするために実施するもの、という印象が強いのではないでしょうか。もしくは、経営合理化や占有率アップ、商流改善などのために、やはり大企業が行うというイメージがありますよね。
ところが昨今では、中小企業が、それも同業・同地域の会社をM&Aするケースが増えているのです。下の図表は従業員300人以下の企業のM&A数ですが、リーマンショックによる不況時を除くと一貫して数字は伸び続けているのがわかるでしょう。
これには理由があるのです。
まず、現在多くの中小企業では経営者の高齢化が進んでいます。と同時に、経営者の引退(事業継承)年齢が以前よりも若くなってきているのです。その昔は子供がたくさんいたので、経営者も「長男が継いでくれなくても次男や三男が継いでくれるかも……」となかなか踏ん切りがつかなかったのです。ところが、昨今は少子化で子供の数が少ないから結論が早く出る。これが、承継年齢が若年化する理由です。結果、イキのいい企業が売り手として市場に出るようになったのです。
会社は、解散するより売る方がはるかにもうかる
二つ目の理由は、昨今の地価高騰。会社を解散して清算すると、土地代や建物代などが簿価よりも高い値段となり、思いもしない額の余剰金が出てしまうのです。それ自体はいいことですが、ここに高額の税金がかかります。まず、法人税が徴収され、残金に対して今度は所得税がかかります。場合によっては下記図のように、税金だけで7割も取られてしまうことになるのです。
一方、企業を譲渡した場合だと、株式売却になるので、売却益の2割しか税金がかかりません。図表のように2億円の利益があった場合だと、解散して手元に残るのは5900万円。これに対して譲渡であれば1億6000万円と3倍近くにもなるのです。さらにこれは買い手にとってもメリットを生みます。売り手が「これだけ手元にお金が残るのなら、少しは値引きしてもいいか」と考え、解散価値よりもディスカウントするケースが多いのです。
そして三つ目が、コンプライアンスの強化とビジネス(出資経路)の複雑化が上げられます。会社を解散するには、以下のような手続きが必要です。
2.土地・建物処分
3.取引先との契約解除
4.仕掛品・途上契約の履行
5.店舗・施設の現状復帰
6.従業員の生活保証
7.従業員の再就職支援
8.負債・リース料の清算
9.出資元への返金・説明
3~9などはその昔はかなりおおざっぱに行えましたが、現在では厳しく取り締まりを受けます。さらに言うと、ベンチャーキャピタルが出資者だった場合、事業者に「競業従事忌避義務」や「業務専念義務」を負わせているため、廃業も転職も難しい。だから「売却」を選ぶケースが増えているのです。
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