パソナや旧インテリジェンスが若手人材を輩出し続けた理由
その2つ下の「シャドウキャビネット」は、各部署の若手No1を集めて影の役員会とするというもの。パソナなどが「ジュニア・エグゼクティブボード」という名称でかつて実施しておりましたね。それをまねてうまく運用している企業があります。
営業や経理、人事、システムなどを担当する30歳前後、一番勢いがある年代の実力者をそろえて、そこに、役員会に出す試案を諮るのです。顧客や商品、現場作業などに最も通じた彼らから、試案が果たして実現可能か、修正すべきポイントはどうか、など念入りに実務チェックを受ける。そうして情報を大量に収集した状態で、社長はホンモノの役員会に出席いたします。
普通だと、役員たちは自分の持ち場に関してはプロだから、細かい話は社長から突っ込まれることはないと、高をくくっているでしょう。ところが、社長は微に入り細をうがつリアリティをもって、次々に役員に対して詰問してくる……。取締役の姿勢が正され、経営に緊張感が生まれること間違いありません。若者は「会社を動かしている」という満足感を得られ、同時に上層部を覚醒させるという2つの意味で、社風の改革に資するでしょう。
導入難易度が高い右側の制度群の中では、ブティック型ミニ経営者制度が面白いところです。部や事業部にすべきところを、思い切ってカンパニーにしてしまい、自由度・裁量権を上げる制度。1990年代後半のインテリジェンス(現在はパーソルの事業部)が、この制度をうまく活用しておりました。当時の社長は「筋金入りのベンチャー経営者」と言われた宇野康秀氏(現USEN-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEO)。彼が上に立ち、その下にミニ経営者が並ぶ。こうした形で鍛え上げられたから、藤田晋氏(サイバーエージェント代表取締役)はじめとした沢山の若き起業家が生まれたのです。
ここで毎度ながら同じ注意を書かせていただきます。
今回書いたのは「ホンの一例」であり、制度はいくらでも作れます。その際の目的も「安心して成長を楽しむ」「出る杭を育てる」以外に、これまたいくらでも設定可能です。
だから、今回は頭の体操としていただき、実際に御社が希求する目的に対して、ピッタリな制度を作ってほしいところです。そうして、応募者にアピールし、一方で社内も変える。会社を変えるなら「制度」はかなり有効です。
ないのなら作ってしまえ、新制度。まさに採用は無手勝流の極みと言えるでしょう。
[Human Capital Online 2021年12月23日掲載]情報は掲載時点のものです。
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