中小企業を大企業と同じ形に変える「社員交換制度」

 右側の2つは、かなり難しい仕組みなのですが、社員を大切に思い、成長を促す気持ちが伝わってくるものです。まず、先端支社体験。こちらは、若手社員で頑張った人たちに、1カ月の「研修期間」を与えて、最先端の支社にて遊学してもらうというもの。地方の会社なら東京や大阪に、東京の会社ならシリコンバレーに、といった感じです。

 1カ月休暇を与えるのだと、本人も仕事を忘れてしまうし、会社のためにもなりません。そこで、社内の先端拠点に送る。今すぐそんなハードな環境に異動させると、ついていけず心が折れてしまう可能性が高いでしょうが、こうやって事前見学をして、慣らし運転とする。ゆっくり確実に育てていくことと同時に、本人にとっては「ワーキングホリディ」を楽しむ感覚とも言えます。この話を説明会でするだけで、参加学生の表情が変わるのが目に浮かびませんか?

 最後の1つは、自社だけでは無理な仕組みです。周辺の数社とコンソーシアムを組んで、自社ではキャリア展望が描けない社員に、行きたい会社を選んでもらって留学。良かったらその後移籍、という制度です。これはかつて広島県の安芸高田市でキャリアプロジェクト広島という団体が介在して、実施をしておりました。大企業に入社すれば、配属された部署と肌が合わない場合、全く違う仕事・環境へと異動できます。中小だとそれができないから退職率が高いという面があります。この制度なら、大企業と同じようにストレスなくキャリアチェンジできる。出向→転籍と言う形なら転職歴にもカウントされません。導入には手間がかかりそうですが、「応募者を安心させる」キラーコンテンツとなりうる制度でしょう。

出る杭を引き寄せる「事業資金オプション」制度

 さて次は、いよいよ多くの企業が望む、「異能人材」「出る杭」が集まるような会社作りに資する制度です。こうした変革人材が喜ぶ内容であり、この制度を長年運用していくと、社風自体も変わることを期しています。

 これも、実在する制度を集めて、難易度別に並べてみました。以下、かいつまんで説明いたします。

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 まず、難易度が低い左列の3つ。これは、「異能人材が喜びそうな」機会を与えるという趣旨ですね。一番上は、新規事業のネタになるようは博覧会に参加する権利(海外の有名なものに!)。二つ目は役員会への陪席で、中期計画の立て方や資金繰り、予算進行、そして事業の意思決定プロセスなどを学べます。3つ目は将来役に立つマスコミリレーションを作ることができるというもの。最後の一つは人事異動となるので、少し導入難易度が高いかもしれません。

 続いて中列。一つ目の「事業資金オプション制度」、これは出色の制度だと思っています。この企業では、若手社員が査定のたびに、その評価に応じて「〇〇円」というよく分からない札(デジタルタグ)をもらうのです。査定の度に、パソコン上でそれが貯まっていき、使用機会は30歳になった時にやってきます。今まで貯まった資金をもとに、社内起業ができるのです。この時、アイデアや実行力に自信がない人は、周囲の友人などにこのお金を供与し、彼の事業に加わるということも可能。こんな形で、起業家意識、フォロワーシップを育成していくのです。この制度、説明会で話してみたいですね。

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