社長と若手社員の「秘密の飲み会」が会社を変えた

 まず、制度を作るときに大切なのは、「目的」です。そして、その目的に沿って制度案を捻出し、それを導入難易度の高低で並べてみる。もちろん、導入難易度が低くいものから手を付けるべきですが、導入が難しくとも効果が大きいものは、先回りして長年月を掛けてじっくり作っていくことも必要です。

 つまり、制度設計は経営改革の一貫であり、そのほんの一部のベネフィットとして採用にも資すると考えてください。

 さあ、まずは「安心して働き、成長を楽しめる会社に変える」ことを目的として制度を作ってみることにしましょう。これは人が集まる会社の最低条件ですね。過去に見て来た面白い事例をもとに、この目的に沿って、制度案を並べてみました。

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 最も簡単なのは、左列の2つ。内定者に社員同行や社内行事参加をしてもらう制度などはすぐに導入できるでしょう。内定承諾に悩む学生にも、この仕組みはアピール度合が高いはずです。その下の「父母向け説明会」も、両親の反対で内定承諾が出ない学生などに効果てきめんです。こちらは、シリコンウエハーのカッティング機械で世界的企業のディスコがかなり昔から実施している制度です。

 この2つの制度など、大したものではなく感じますが、これがあるだけで、採用広告にも大きく打ち出せるし、大学のキャリアカウンセラーさんの引き出しにもなります。他社と明らかに差異化できるのです。

 まん中のMVS(最優秀サポート賞)などは、社風をよく表しますね。最も数字を挙げた人ではなく、その人を陰で支えた人を表彰する。これなど、「私は引っ込み思案で」という学生の心をつかむこと請け合いです。

 その下の「ヒミツの社長飲み会」。これは面白い制度でした。社長は、毎月1回必ず、若手社員の誰かと飲みに行き、愚痴や不平不満、改善策、顧客の状況などを聞いているのです。そして、これを絶対に他者にはバレないようにしている、という制度。この効果は多重に出ます。まず、若者は社長と近くなれる。困ったことを即相談できる。これが一つ目の効果。二つ目は、自費では行けないレストランに行くなど、豪華な体験ができること。そして三つ目は「中間管理職の背筋がピンと伸びる」こと。そりゃそうですね。変なことをしていたら、知らない間に社長に直接伝わってしまう。これでは中間管理職は襟を正さねばなりません。

 どうですか?制度でずいぶん、社内が変わることが、実感いただけたでしょう。

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