「会社の弱み」はブルーオーシャンの母
ここまで、エンジニアやIT関係の話ばかりをしてきたので、「わが社には縁のないことだ」と考えている人も多いかもしれません。でも実は、このブルーオーシャン作戦は、多くの企業で活用可能なのです。
たとえば、とてもワンマンな社長で、社内にはイエスマンしかいないような会社があったとします。普通はそれを隠しますよね?でも少し言い方を変えれば、それも立派なアピールポイントになるのです。
「うちの社長は“俺について来い”タイプだ」
そして、採用で重視されるのは、「我が強くなく、言われたことを素直によく聞く」ということ。それだけで十分と謳(うた)えばどうでしょう?やはり、多くの人は「自由がなさそう」「怖い」と感じるでしょうが、少数ながら「俺、リーダーシップとか無理。言われたことしかできない」と思っている人はいます。世の求人広告はとかく「自由」「自律」「リーダーシップ」とそんな話ばかリだから、そういうのが苦手な人は行き場がなくて困っているのです。そんな人と、このワンマン社長は良い関係になるでしょう。
そう、イイものねだりではなく、割れ鍋に綴じ蓋、凸と凹という関係を探す。ブルーオーシャン戦略とはそういうものです。
同様に、「うちはグルーバル化なんて絶対しない。国内のみ。できれば県内に閉じこもりたい」という会社もそれをアピールすれば、「私、地元しかイヤ」という人が集まります。
さらにいうと、中規模以下の会社は、戦力層が薄いことさえも、大きな取り柄となるのです。
「困っています。中国工場を作りたいのですが、中国語を話せる人がいません」
こんな弱点をさらせば、「あ、俺の生半可な中国語でも、ここなら重宝してもらえるかもしれない」と言う人が来る。そうなんです、たとえば、トヨタやパナソニックであれば、多少中国語ができる程度では、現地赴任なんて夢のまた夢、でも、戦力層の薄い中小なら、即かなう。こんなアピールはいくらでもできますね。
「単なる事務ですが、イラストが描ける人はPOP(店内広告)もやってもらいます」
「ヤフオクのオタク。もうあなたはうちのシステム責任者になれます」
とこんな風に。イラストやウェブデザインができても、その腕を活かせず普通の営業や事務に就いている人は世の中に多数います。彼らのちょっとした技能でさえも、中小では活かせる。それがウリに変わるのです。
実際、最後のケースでは、首都圏のそこそこ有名な漬物(土産物)屋さんで同様の募集をかけ、引きこもりフリーターを採用した話を聞きました。大手ではまず採用されることのなかった彼は、アマゾンや楽天で早々にネット販売網を作り、売り上げを倍増。 さらにはECサイトの在庫管理機能を活用して、いつのまにか在庫に応じて必要材料を調達し、製造を指示する簡易ERP(統合業務基幹システム)を開発したそうです。今ではそのお店の“神”として崇め奉られ、すっかり人見知りも治ったとのこと。まさに、凸と凹がピッタリ嵌り、会社も社員も成長したケースですね。
「欲しい人材はどこにいるか」と考えるのではなく、「どこかに他社が狙っていない空白はないか」に考えを変える。そしてその空白の池に「自社の特徴」という針を垂らす。その際、えさとなるのは「長所」だけでなく、一般的に「短所」に思われていることをそのまま活用できる。弱みとは普通隠すので、これをアピールする競合がほぼおらず、この弱みを嬉しく思う多数のニッチ者があぶれているのです。
逆転の発想で、ブルーオーシャン作戦にトライしてみてください。
[Human Capital Online 2021年12月16日掲載]情報は掲載時点のものです。
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