転職前提に「出世魚キャリア」を標ぼう
さらに、この会社を担当した賢いRAは、これら4つのネタを合わせて、絶妙のキャラ立てで、CAに伝えていました。いわく
「出世魚キャリアだよ」
これは、未経験の小さな稚魚を立派に育て、名前の違う大きな企業に転職させていく、という意味でしょう。「なにそれ?」からコミュニケーションが始まる様子が目に浮かびます。もちろん、広告にそのまま載せたとしても目を引くでしょうが、さすがに、「NECや富士通への転職多数」などという話を大っぴらに公開するのははばかられます。だから、これは「転職エージェント」というクローズな空間にとてもマッチした情報伝達でしょう。
何よりすごいのは同社がこの「大きくなって立派な企業に転職していく」キャリアパスを、許容していたこと。多くの企業は他社への流出を防ごうとします。対して同社は、それを売りにすることさえ良しとしました。だからこそ採用が成功したといえるでしょう。
まあ、その裏には、「とはいえ辞めずに残る人は多い」という事実と、「欠員が出ても未経験者をいくらでも育てられる」という自信があったからこそなのでしょうが。
自社の強みが届きやすそうな相手に絞る
ネタを集める。ターゲットに適切に届くよう、優先情報を絞る。そしてキャラ立てする。この流れがお分かりいただけましたか。
似たようなケースとして、SEを募集した別のIT企業を見てましょう。こちらは「経験者でなおかつ、システムインテグレーター(SIer)かその関連企業での経験が3年以上ある人」というまさに「採用競合が多々でなかなか採れない」人材を求めていました。大手IT企業や、一般企業のシステム部門にいるSEなど採れるわけはありませんから、2次請け、3次請けの中小で狭い範囲のドキュメントを書いているような人材をターゲットにするしかありません。とはいえ、この会社がネタにできたのは以下くらいでした。
2. 家族構成員数に応じて住宅手当も増額
3. 結婚、出産お祝い金あり
この程度のネタでは、採用は絶望的に思えたのですが、この企業を担当したRAは切れ者で、こんなキャラ立てをしました。
「結婚を考えている経験者なら、一気に年収が100万円アップするかもしれません」
20代後半~30代前半の経験者だと、「一回、話を聞いてみようか」と思うでしょう。2次請け、3次請けで働いて悩んでいる人の場合、今の会社の社風や上司との関係、取引先が嫌で、「それさえ変えられるなら、待遇や残業は今と同程度でいい」という人もそこそこいます。その中で、結婚を考えている3~4割程度の人は、このフレーズに乗ってくるはずです。全員に投網するよりも、絞ってキャラ立てした方が、確率は上がるという好例です。
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