就職ナビとタダでは契約するな!

 もう一つ、とっておきの話をしておきます。最初に書いたように、早期に学生へアプローチするなら、大学に入り込むことが不可欠です。ではどうやってやるのか?
その答えは、「就職ナビを使う」こと。

 大手の就職ナビは、企業への営業部隊とは別に、大学にサービスを提供する支援部隊を持っています。「大学渉外スタッフ」などと呼ばれるこうした人たちは、日々、大学に何かサービスを提供できないか考えているものです。「業界セミナーを開催したいという企業がある」という話は、彼らにとってまさに渡りに船。大いに力になってくれることでしょう。

 そこで、御社が就職ナビを活用するときに、「A大学とB大学で業界セミナーを開きたいんだ。個社じゃなく業界ね。だから、両大学の就職課(キャリアセンター)を紹介してくれないか。うまくつながるなら、ナビに1つ広告を入れるから」とこんな条件を出すのです。

 こんな活用法をしている企業はそれだけで、他社を出し抜けるでしょう。

 最後に、今回も釘を刺すようなことを書かせていただきます。

 ここまで読んでも、大手企業の採用担当は「これは中小の話だね」「こんな少数の学生にアプローチしても意味がない」と考えるかもしれません。でもそうではありません。大手でもこうした戦術を駆使すれば必ず効果が上がります。ただしここに書いた話を猿真似するのではなく、骨子たる2事=「差別化」「顧客利益」をいかに実現するか、御社流に考えてください。

 たとえば、某超大手保険会社の採用部門は、「人気ランキングをライバル社よりも上げろ」と社命を受け、調査したところ、「アンケートに同社の社名を書く学生が20票増えればいい」と判明しました。アンケートは学生30人に1人の割合で行っているそうなので、逆算すると600名の同社ファンを新規獲得すればいいことになります。そこで、6大学のテニスやスキーなどのインカレ(大学合同型)サークルの中で、部員数が200名を超える6サークルを選び、春夏冬の合宿や総会のたびに、缶ビールと缶チューハイ、乾きモノを差し入れしたそうです。

 かかったお金は、1500名×年3回×1人500円=225万円。これで翌年はライバル企業よりもはるかに上の人気ランクとなりました。

 どうですか?大手だったとしてもいくらでも手はある。無手勝流で、顧客サービスし、競合をしのぐ。そこのための参考事例として、今回は中小を題材にしたのです。

[Human Capital Online 2021年12月2日掲載]情報は掲載時点のものです。

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