キャラ立て法としての「Peek1 Bottom1」

 続けて私の勝手な造語をもう1つだけ挙げさせていただきます。それは、「Peak1 Bottom1」という言葉。組織のキャラ立ての時に「最も重要視する要素」と、「それと正反対な要素」を考える、という意味です。

 トヨタの場合、Peak1はPDCAサイクル(改善行動)でしたが、このような複雑な特性でなくとも、相性の5軸にある言葉でもよいし、また、SPIの性格因子でもかまいません。ある程度安定的で、「入社後に変えたり伸ばしたりするのに時間がかかる」要素を1つ決めることから、組織のキャラ立てを始めてください。

 なかなか分かりづらいと思うので、実例を1つ出しておきます。こういう場合やはり、私が長く在籍したリクルート社の話となってしまいますがお許しのほどを。

 リクルート社の場合、創業者の江副浩正氏が、社員のあるべき姿を表した至言があります。

 「自ら機会を作り、機会により自らを変えよ」

 今でも社員の中にこのスピリットは連綿と根付き、外から見た人の目に、リクルート社の組織風土はそのように映るでしょう。

 この言葉がスゴイのは、相性の5軸の多くについて、どちらに振れるか、を指示しているところです。

 「競争←→協調」軸は、「自ら」という言葉があるので、明らかに競争を志向しています。「変革←→伝統」軸は、「機会を作り~自らを変えよ」とあるのでもろに変革を示します。「情←→理」軸についての示唆はありませんが、「行動←→思考」軸はやや行動、「スピード←→緻密」軸は、機を見るに敏という意味で、ややスピードと読み取れる。

 この至言から、リクルートの第一・第二軸は「競争」「変化」であり、「協調」「伝統」重視者は定着が難しいことが見えるでしょう。ただ、私はリクルートの場合、相性の5軸は「キャラ立て」としてあまり用いない方がよいのではないか、もっと別の良い指標がある、と考えています。

 なぜか?リクルートの場合、「相性の5軸」ではかなり多様性が進んでいるからです。確かに、「伝統」重視というタイプはなかなか定着が難しいでしょうが、変革←→伝統の真ん中くらいまでであれば、そこそこ社内に見られるようになっている。同様に、競争←→協調でも真ん中くらいまでの人はまま見られます。真逆のみ排除している状態です。

 軸として弱い「行動←→思考」や「スピード←→緻密」は両極とも存在するでしょう。つまり、多様性に富み、耐性が強くなった状態なので、ここに新たなくさびを打ち込むのははばかられるのです。

 さあ、ではキャラ立てにはどんな指標を使うべきでしょうか?

 私は「達成意欲」を軸にすべきと考えています。色々なタイプが存在するようになったリクルート社内で、その多くが共感する同一性は達成意欲であり、それは社内で「やり切る」「圧倒的当事者意識」という言葉で日常的に汎用されている。どんなタイプであれ、やり切る行動は称賛され、大きな絆となっているはずです。

 この例でお分かりいただけましたか?

 SPIの因子とか、相性の5軸などという「ありもの」の使い古しではなく、御社独特の「キャラ立て軸」を見つけてほしい。さすれば、組織は整い、同時に強くなるのです。


 さあ、この作戦のまとめに入りましょう。

 組織はしっかりキャラを立てること。それで、採用も育成もマネジメントも、スムーズに進むようになります。そのためには「Peek1 Bottom1」が役に立ちます。そして、質問紙形式のアセスメントなどに頼らず、独自の手法を編み出してください。

 一方、その「キャラ立て」以外のセグメントはあえて緩めて、多様性を保ちましょう。たとえば、相性の5軸でも、社として重要ではないような弱い軸は無視すること。最重要軸に関しても、「真逆」な人は落としても、真ん中あたりまでは採用ウイングを広げていく。こうしたことで分散へのチューニングを施してみて下さい。

[Human Capital Online 2021年11月11日掲載]情報は掲載時点のものです。

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