アセスメントとは質問紙を指すわけではない

 このトヨタのエントリーシートを使った「キャラ立て→集約&分散」の仕組みは、アセスメント理論を知れば知るほど、本当によくできていると感心してしまう代物です。

 アセスメントと聞くと、質問紙形式のテストのことを指すと考える人が多いのですが、それは間違いです。人的な特性を計る手法なら何でもよいのです。「適性検査の限界と上手な活用法を知っていますか」で、インバスケットや論文完成法などについてさわりを説明いたしました。いわゆる口頭試問形式の面接であっても、しっかり「探るべき要素」「手法」が確立されていて、有意に比較検討できるものは、立派なアセスメントだと言えるでしょう。こうした面接をStructured Interview(構造化面接)と呼びます。

 トヨタがエントリーシートの中で「PDCAサイクル」のある人を合格とさせるという選抜方法も、有意に比較検討が行えるすばらしいアセスメントだと考えています。質問紙でのアセスメントでは、基礎的な性格傾向などの単純化された因子は把握可能でしょう。一方「適性検査の限界と上手な活用法を知っていますか」に書いた通り、PDCAサイクルなどは、色々な要素が複雑に絡まって発揮される特性であるために、質問紙や論文完成法、単純なインバスケットなどでは見えづらいものです。ただ、エントリーシート内であれば、容易に読み取ることができる。出来合いのアセスメントパッケージなどに頼らず、最適な把握法を見出したトヨタは、やはり質実剛健でスゴイなあと、まじまじと感じてしまうのです。

ここでトヨタ的な手法を再度まとめておきます。

まず、自社のとても大切で強い特徴を「1つ」に絞る。これが キャラ立てです。
そして、そのキャラで徹底的に絞り込みをかける。これが 集約
あとの部分は敢えて許容して、一次選考を通過させる。こちらは分散
こうして組織内には一本強い絆ができ、他方、多様性が生まれる。
この絆のおかげで、理解・共感が保たれ、そのため、育成やマネジメントもはかどる。
一方で、その他の部分では多様性があるので、変化耐性が養われる。

 ようやく、組織風土と個人特性、そしてアセスメント活用の解が見えてきたのではないですか?組織風土をガチガチに細かく分析して、それら全てに合う人を採用するというのは、実現が難しいし、変化耐性が減じる。一方、全く異分子を集めると、育成もマネジメントもはかどらず、離職が多発する。そのどちらでもないのが、「キャラ立て→集約&分散」なのです。この過程を、組織風土のチューニングと私は呼んでいます。

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