「神スペック」の人材を採用できても、自社の組織風土に合わなければ活躍してもらえず、退職に至ることもある。こうした問題の解決には組織風土と人材の志向の双方を見える化することが有効だ。市販のツールをしのぐ、面接の必殺技とは。

組織風土を語る場合、その切り口は多々あります。中でも、汎用性が広く、しかも、多くの人が納得するものを一つ、上げることにいたします。
早期離職者の調査から見えてきた「相性」を見分ける5軸
以下は、リクルートの転職エージェントが今から20年ほど前に、第二新卒者(新卒入社して3年以内に転職してしまう人たち)数千人に対して行った調査から判明した「企業と個人の相性の5軸」となります。この5軸が「組織風土」を語る上で分かりやすく、これに合わないと社員は早期退職に至ってしまうというものです。
競争側にあれば、「一番になれ」「目立て」という社風と言えるでしょう。協調側であれば、「みんな仲良く」「縁の下の力持ち」的な風土となります。
2. 思考の方向性: 革新 ←→ 伝統
革新側にあれば、「昨日と同じことをやっていたら意味がない」となり、伝統側であれば「奇をてらわず、積み重ねを大切に」となります。
3. 判断の機軸: 情緒 ←→ 理性
結論が出しにくい難題に対峙(たいじ)した時、最後に決め手となるのは「情」か「理」かという問題です。「理詰めで考えるよりも最後は気持ちで」となるか、「好き嫌いや同情など捨てて合理的に」となるかの違いです。
4. 評価の重点: 行動 ←→ 思考
上司が部下を叱咤するポイントが、「能書き垂れてる暇があったら、行動しろ!」となるか、「考えもせず行動する奴があるか!」になるかの違いです。
5. 仕事への姿勢: スピード ←→ 緻密さ
一刻を争う仕事なので「大体でいいから早く」となるか、1つのミスが命取りになるから「ゆっくりでも間違いなく」になるかの違いです。
直観的に5軸判断できる個人、難渋する組織
この5軸、「あなたはどちらですか」と聞くと、細かなアセスメントなどしなくても、直感的に「私はこっち」と答えてくれる人が多く、しかもそれが本当に本人を表しているので、かなり分かりやすい判断法と言えそうです。「どちらか迷う」と言う軸に関しては、「どちらもある」のか「どちらもない」のかをはっきりさせておきましょう。いずれにしても、その軸はあなたの相性診断の重点軸ではないと言えます。なので、企業との相性を考えるとき、「この軸は捨ててもよい」程度に見ておいてください。
一方企業の方は、自社の風土はどちらか、得てして判断に迷うケースが非常に多いものです。どちらか選べた場合も、傍から見ると、「本当にそうだろうか」と疑わしく思われるケースも少なくありません。その理由は以下のようなところにあるでしょう。
2. 社内でも部署や職務により風土が異なる
3. 発言者が諸事情あって情報をゆがめている
1.の理由で判断に迷う場合は、まず、取引先に意見をもらうのがよいでしょう。相手企業は、同業や、同業でも規模の異なる企業、他業界などとも取引をしており、営業への要望や発注の仕方などでそれぞれの癖を把握しています。さらに欲を言えば、多事業を展開していて他業界にも明るい取引先に話を聞くと、より自社の特徴が明確になるでしょう。
2.の場合は、部署ごとに他社や世間と比較することをお勧めします。確かに社内を見回せば、大抵の場合、「営業はアグレッシブで、内勤は慎重」といった傾向があります。ただそれでも、全社的にアグレッシブな会社は、経理部署でも新たな会計基準やシステムツールなどを冒険的に取り入れたりしていて、他社の経理とはキャラクターが異なるのがよく分かるはずです。
3. には色々なケースがあります。広報的に良く見せたいという願望や、「正直に言うと社長や上司に怒られる」といった場合もあるでしょう。経営者が「こうあってほしい」という希望を込めて言うこともあります。こんな歪曲(わいきょく)要因を排除するためには、「今、社内の風土的に何か困っている問題はあるか?」という問いを投げかけると効果的です。この問いにより、素の話が出てくることが多いものです。
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