うつ最大の敵は「ストレス」
発散ではなく、予防するアクションを

 前回、うつの症状は自分を取り巻く「環境」と「自分」との間で、何らかのストレスを感じることから起こるものだとお伝えしました。どういう環境が自分にとって苦手なのか。そういう環境に置かれたら、どう対処すればいいのか。この対策を準備することが再休職防止につながります。

 今回はさらに一歩踏み込んで、具体的な仕事の場面でのストレス対策について取り上げます。

 これまで、私はうつになった多くの患者を診てきました。うつを引き起こす要因は大きく分けて2つあります。それは、「環境の要因」と「自分の要因」です。環境の要因とは外の環境によるストレスであり、これをどう受け取るかが自分の要因です。

 ストレスを感じた時の自分の受け止め方や、対処方法に課題がある場合が「自分の要因」ですが、それ以前に、まず、どういう種類のストレスによって、自分がうつの症状を引き起こしたのか。どういう種類のストレスに自分は弱いのかを把握しておくことが大事です。

 もともと、ストレス(=stress)とは工学の概念であり、チカラが加わるとモノが歪む現象のことで、ストレスを与える外力をストレッサーといいます。ひと口にストレスといっても、日常生活ではいろいろな外的圧力があり、実は、悪い影響を与えるものばかりではありません。適度なストレスが良い状況を生むこともあります。

 例えば、「○○の資格試験に合格したい」といった目標もストレスの一つですが、目標があることで「頑張ろう」という意欲が生まれることもあります。

 大事なのは「自分に悪い影響を与え、うつ症状表出の原因となったのはどういうストレスなのか?」を明らかにすることです。

 ここで一つ、図表をご紹介しましょう。これは仕事のストレスによって、うつの症状などの健康問題が発生する過程を示しています。2015年に厚生労働省が導入した「ストレスチェック制度」の大元になった、米国労働安全保健研究所の「職業性ストレスモデル」を改変したものです。

ストレス反応には仕事以外の要因も関わっている
ストレス反応には仕事以外の要因も関わっている
仕事のストレス以外に、さまざまな要因が加わってストレス反応や健康問題が現れる。(1)の個々の説明は別表を参照
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 図内の番号順に左から右へ見てきいます。

 (1)は「仕事のストレス要因」です。仕事上でストレスを感じる13個の要因が列記されています。個々の要因についてはこの後、「仕事のストレス要因・具体的な内容」表で示しますが、まず知っておいていただきたいのは、(1)の仕事のストレス要因だけで(5)のストレス反応が起きるわけではないことです。

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