自分を取り巻く環境を自分でコントロールすることはできません。職場の状況や業務内容を自分の希望通りに変えられるわけではありませんし、苦手な上司の性格や言動も同じです。
そこで、かつて自分が苦手な環境に対峙した時に、どう考えて、どう行動したか、誰かに相談したか、周囲とどんなコミュニケーションを取ったかなどを振り返ります。この過程で、自分のものの考え方のクセや行動に「うつ」を発症する要因がなかったかを探ります。
体調を崩し始めた時にできることはなかったか。何をしていたら、うつを発症せずに済んだだろうか。そうできなかったのはなぜだろうかなど、自分自身の要因を探るのが「自己分析」です。
ここで注意したいのは
●高圧的な上司が無理難題を強いたから体調を崩してしまったのだ
●仕事の量が多過ぎたのだ
●全く休暇を取得させてもらえなかったせいだ
など、他人や環境といった他罰的な要因だけを理由に挙げていては本当の意味での回復にはつながらないことです。
自分と同じ環境に置かれても、すべての人がうつを発症するわけではない。自分の中にもうつを発症する要因があった。そう考えることが必要です。最初にうつを発症した時の自分を振り返る中に、同じことを繰り返さないヒントがあります。
リワークプログラムでは、この自己分析の内容について主治医とともに理解を深めていきます。
最初に体調を崩した時の初期症状が「不調のサイン」
そして、もう一つ大切なのは、最初に体調や気分の変化が現れた時に、どういう症状から始まったかを思い出して知っておくことです。
「眠れなくなる」「食欲がなくなる」「頭痛が増える」など、体調を崩し始める時の初期症状は人によって違いますが、再休職を繰り返す場合、同じ症状や経過をたどって休職するケースが多いことが分かっています。
最初に現れた症状を思い出すことで、今後、自分にその症状が現れたら、不調の前兆ととらえることができます。
風邪薬のCMに「あなたの風邪はどこから?」というフレーズがありますが、これを置き換えるなら「あなたの不調はどこから?」を知っておくことで、体調の変化を知る目安になるのです。
早く不調のサインに気づくことができれば、休養や気分転換を早めに取り入れたり、周囲に相談するなどして、深刻になる前に不調の芽を摘むことができます。不調のサインを見逃さず、気づいてケアすることが大事です。
次は、その具体的なノウハウです。
毎日、体調と気分をチェックして「不調の芽」を摘む
当クリニックのリワークプログラムでは、様々なプログラムが行われていますが、その中で、最初に取り組んでもらうのが「セルフモニタリング」(=自己観察記録)。次に多くの時間をかけるのが「セルフケア」(=自分自身をケアする)プログラムです。
「セルフモニタリング」では、毎日の自分の体調や気分などを自分で観察し、記録して管理します。
基本のチェック項目だけでも多数あります。就寝時刻、起床時刻、寝つきの状況、中途覚醒や早朝覚醒の有無、睡眠時間、睡眠の質、朝の気分はどうだったか、食欲の有無、不安やイライラ感はあるか。おっくう感はあるか……などです。
これらを観察し自分で管理することが毎日の習慣になると、その日の活動量と疲労、睡眠が翌日の体調に与える影響について理解が深まります。
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