なぜ、うつ休職者は再休職してしまうことが多いのでしょうか。再休職せずに働き続けるために必要なことをお伝えしていきます。

その社員にとって危ない環境があった

 私たちは自分を取り巻く、様々な「環境」と「自分」との関係の中で生きていることに気づきます。

 つまり、うつの症状は「自分を取り巻く環境」と「自分」との関係において、何らかのストレスを感じることから起こると考えられます。そして、眠れなくなる、食欲がなくなるといった症状が現れ始め、やがて出社できないほどに深刻化し、休職に至ります。

 しかし、全く同じ職場環境、同じ業務内容で働く社員が皆、うつの症状を発症するわけではありません。

 例えば、Aさんにはうつの症状が現れたけれども、同じ職場のBさんやCさんには現れないということは実際、よくあることです。

 これは人によってストレスに感じることや苦手なことが異なり、また、そうした苦手な場面に遭遇した時の対処方法も人によって異なるからです。

 ある社員にうつの症状が現れたのは「その人にとって苦手な環境、危ない環境がそこにあった」からです。それは「こういう職場」「こういう上司」「こういう業務」「こういう事件」というように、具体的な環境の要因に分別できます。

復職者本人が再休職防止対策を準備しているか

 うつ休職からの復職時には、うつを発症した時と同じ部署に配属になる場合も多いようです。だからこそ復職に当たっては、復職者本人が

●「どういう環境が自分にとって危ないのか」を自分で把握し、
●もし危ない環境に置かれたら「どうやって自分の不調を防ぐか」、自分自身で対策を準備して復職すること。

 この2つが必要です。

 なぜなら「自分にとって危ない環境」を把握できるのは本人だけであり、そして早期に危険に気づいて対処できるのも、本人だけだからです。

 まず本人が、自分で体調管理して再休職を防ごうという意識を持つこと。そのために自分が苦手な環境や状況を把握して、体調を崩さずに働き続けるための対策を探し、それを身に付けて復職すること。

 これが、復職後の就労継続の可否を大きく左右し、再休職を防ぐ最大の予防策となります。

 繰り返しますが、うつの症状が改善しただけで、本人が再休職防止について何も準備しなければ再休職してしまう可能性が非常に高いのです。

 そこで人事担当者が、復職を控えた休職者に「再休職しないために、どんな対策を準備していますか?」と尋ねて、本人が状況別に複数のプランを準備していることを確認しましょう。産業医を通じて検討と対策を求めることをお勧めします。

では、再休職しないための対策とは?

 ここからは、当クリニックで実施しているリワークプログラムの例を紹介していきます。

 このプログラムでは休職後、休養と服薬によって生活リズムが整ってきた時点で、まず「なぜ自分は休職することになったのか」という「自己分析」課題に取り組みます。何が自分にとって危険な環境なのか、苦手な環境なのかを把握し、理解して、休職者自身が対策を検討するためのものです。

次ページ 最初に体調を崩した時の初期症状が「不調のサイン」