北岡氏:挙げられた3点は適切ですね。まずは市場経済の開放や政治改革について、中国はソ連の失敗に学んだことも多かったのでしょう。ソ連は政治改革をやろうとして失敗しましたので、中国では政治は変えない、と。
中国には皇帝が支配する長い歴史がありました。14億人という多くの人民を統治するためには強力な指導体制を必要とします。そのため、経済成長という正当性をもって国民を納得させ、現体制を維持しようとしています。

国際秩序に関しては、中国からすれば西側諸国が勝手につくったものであり、毛頭尊重する気はない。1970年代には「反覇権」と言っていた中国ですが、今はどの国よりも覇を競っている。目指すのは「新しい中華秩序」でしょう。
その一端は貿易の面でも見えています。中国を頂点とする「恩恵的な貿易」を進めるというのがその特徴です。
佐橋氏:恩恵的な貿易とは面白いですね。どのようなものでしょうか。
北岡氏:国家と国家との関係が対等ではなく、自由貿易とは言い難い。中国に対して従順である限り、貿易してあげる。ただ、ちょっとでも反抗するとブレーキをかけるというものです。政治と経済が極めて強く結びついているわけです。
これは国際秩序の原則から大きく外れるものです。最初は中国周辺に限定してやっていたものがそれ以外の地域にもどんどん広がってきています。
佐橋さんがおっしゃったように、中国は経済大国として米国に追い付きつつある。米国が、追い付いてきた国に対して厳しい態度をとるというのは、日本がかつて経験したことです。
それだけに、今の米中対立はより難解です。世界史上最も難しい根本的な対立となっています。
Powered by リゾーム?