嘘をつけない真っすぐな官兵衛

 官兵衛は賢い人物です。同時に素直な人でもありました。陰謀家と称される人物は普段から、周りから危ないと思われています。ですから、調略を仕掛けても、誰もが相当用心をします。ところが官兵衛の調略には、みな引っかかるのです。なぜかといえば、彼は真っすぐな性格で、言っていることに嘘がないからです。

 あまり良いたとえではありませんが、詐欺師に極意があるとしたならば、都合の悪い真実を語ることはしないものの、何よりも「嘘はつかない」ことです。真っすぐ迫る人間は、周りに信用されます。官兵衛は嘘を言わない。だからみんな、彼の調略に引っかかったのです。

 官兵衛は過去に、信長に謀叛(むほん)を起こした荒木村重(あらき・むらしげ)を説得に行って、捕まって1年間も有岡(ありおか)城の牢屋(ろうや)に放り込まれ、そのために片足を不自由にするというひどい目に遭っています。

 そこまでやって官兵衛が手にしたのは、"信義"という名声でした。信長は、村重の城に入ったまま出てこない官兵衛を「裏切った」と思い込み、人質に取っていた息子・長政(ながまさ=松寿丸<しょうじゅまる>)を殺せとまで言いました。ところが、ボロボロになって助け出された官兵衛を見て、誰もが「あいつは絶対に裏切らない男だ」と思ったのです。実際に官兵衛は、自分のほうから主君を裏切ったことは一度もありませんでした。

(つづく)

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・山陰の太守、尼子と、名門甲斐武田の家が続かなかった共通点…

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