あえて都心とは逆方向へ

 近場へのワーケーションを推進する動きは、前述のパナソニックだけにとどまりません。

 鉄道事業や不動産事業などを展開する小田急電鉄は、2022年3月から5月までの3カ月間、小田急線の終着駅の1つである神奈川県小田原市で「小田原ワーケーション」を実施。

 「小田原で実証実験をすることにしたのは、山川海などの自然が豊かで、おいしいものもあって、歴史もある魅力的なまちだったから。また、ワーケーション先としてちょうど良い距離だと思ったからです。私自身、在宅勤務が続いた際に、小田原に仕事をしに行ったことがあるのですが、60〜90分の移動時間は日常から離れ、非日常に突入するスイッチになると実感しました」と小田急電鉄 観光事業開発部の木谷周吾さんは、日帰りで行きやすい小田原の距離の魅力を語ります。

 事実、3月と4月に「小田原ワーケーション」に参加した筆者は、その後も月に数回の頻度で、小田原方面へワーケーションしに行くようになりました。あえて都心とは逆方向に向かうことで、道中、目に飛び込んでいる山々や田園風景に癒やされ、気分が変わるメリットを実感しています。手前のターミナル駅で降りて、コワーキングスペースやカフェで仕事をすることもしばしば。都心のコワーキングスペースよりも、人口密度が低く、空間をぜいたくに使える良さを体感しています。

コロナ禍で、住宅地や郊外にコワーキングスペースが登場

 こうした働き方が可能になった背景は、コロナ禍でオフィスや自宅以外で働ける環境が急速に整備されるようになったのが大きいといわれています。例えば、コワーキングスペース。一昔前は都心のど真ん中のオフィス街に立地するところが大半でした。

 コロナ禍では、住宅地や郊外に続々とコワーキングスペースが誕生。会員にならずとも、数時間~1日利用できるドロップインの制度が普及し、複数のコワーキングスペースを利用できる定額制サービスも増えました。また、東京都心部以外にも、コワーキングスペースやカフェとのハイブリッドオフィスなども増加しています。

 東京・丸の内が勤務先である筆者の知人は、週1回は江ノ島の海に近い神奈川県藤沢市のコワーキングスペースを利用しています。「会社と同じ通勤距離ですが、オフィス街ではなくリゾート地に近い場所で非日常の感覚を味わえます。後回しになりがちな仕事にも手を付けやすい」とのこと。

 ビジネスホテルでも、ワーケーションに利用しやすい宿泊なしの滞在プランを用意するところが増えています。3〜5時間のライトプランだけではなく、12時間や18時間の長時間プランに加えて、宿泊してもチェックアウト後も午後6時ぐらいまで働けるような27時間プランなど、利用者ニーズをくみ取った幅広いプランを打ち出しています。そのほか、横浜の「スカイスパYOKOHAMA」のように、テレワーク環境を整えたスパ施設を筆頭に、ワークスペースを備えた日帰り温浴施設も充実してきています。

 また、ハードウエアの面でも変化がありました。Wi-Fiや電源付きのワークスペースを完備したカフェが急増。和食処から、仕事ができるカフェへ業務転換するチェーン店も登場し、連日多くの人でにぎわっています。

 上記の変化が示すように、今はマイクロワーケーションに追い風が吹いているといえるでしょう。

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