リモートワークでの成果をきちんと評価するのは容易ではない。国内でワクチン接種が順調に進み、換気など対策の徹底で感染拡大が一時的に減少に転じたのを受けて、「出社」を強要する揺り戻しも起こった。
だが、ポストコロナに向けた機運が見え始めたものの、オミクロン株の大流行で再びリモートワークに戻るなど、ビジネスパーソンだけでなく、企業もまた「これからの働き方」の模索に追われる日々だ。
「一度通勤の大変さに気づいてしまったら、(コロナ禍前のように)再びオフィスワークへ立ち戻るのは難しいのでは」——そう考えるのは、ヤフー執行役員で従業員の心と身体の健康増進を目指すCCO(チーフ・コンディショニング・オフィサー)の湯川高康氏だ。仕事のリモート化を進めてきたヤフーは今年1月、居住地を全国に拡大できる新たな会社の制度を発表した。4月以降、日本全国どこに住もうが、そこからリモート勤務できる。出社が必要な際は月に15万円までなら飛行機の利用も認めるという、異例の宣言だ。
多くの企業が構想はするものの実現できない「オフィス勤務からの脱却」をいち早く制度化した背景や、リモートワークで見えてきた課題について話を聞いた。

ヤフー 執行役員 コーポレートグループ ピープル・デベロップメント統括本部長 兼 CCO(チーフ・コンディショニング・オフィサー)
リモートワークへの完全移行や、それに伴って日本全国どこでも勤務可能という制度を発表しました。どうしてこのタイミングで実施されたのでしょうか。
ヤフー湯川高康CCO(以下、湯川氏):リモートワークについてはそもそも、コロナ禍以前から取り組んでいました。そうした知見があったので、(20年4月の)緊急事態宣言が発出されたときには、ほぼ全社員で実施できました。ただ、仕事をリモート化できたとしても、それでパフォーマンスが下がっているようでは企業として取り組みを再考せざるを得ません。
そこでパフォーマンスについて計測してみたところ、リモートワーク時は下がるどころか、全体的な傾向としてむしろ上がるということが分かりました。企業の姿勢として、もっと気持ちよく働ける環境をつくりたい。そう考えて、はっきりとリモートワークへの完全なシフトを宣言しました。
従来あった制度を改良したと聞きます。今回発表された制度について、詳しく教えてください。
湯川氏:ヤフーの本社は東京ですが、全国各地に拠点があります。本社勤務の社員でも、都外の首都圏から通勤する社員も多くいました。居住地点については細かく規定していませんでしたが、出社の必要がある場合には午前11時までに出社できる場所に住むこと、という規定はありました。交通費の上限は1日あたり片道6500円、1カ月あたり15万円と定めていました。今までだと、大阪や仙台からの出勤に使用すると、赤字になってしまいました。
4月からは、片道6500円の上限を撤廃します。そして月に15万円以下なら、飛行機での通勤も可能とします。沖縄に住む、あるいは時期によっては北海道で避暑をしながら働くなど、移住やワーケーションなどを活用しつつ、どこでも働ける環境となります。この制度によって、社員により柔軟な働き方を実現させるだけでなく、地方の優れた人材確保も狙っています。
制度対象は全社員なのでしょうか。
湯川氏:カスタマーサポートやサーバールームでの作業が必要なハードウエアエンジニアなどは在宅勤務の難しい職種です。そのため全社員ではありませんが、全体の9割程度が利用可能です。
また、この制度の利用は社員だけに絞ったものではありません。契約社員や嘱託社員も対象となります。同じ会社で働いている社員ということで、分け隔てなく利用可能です。
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