私が経営するグロース・キャピタルは、非連続な成長を目指す「上場ベンチャー」の資金調達や成長の支援をしている。上場ベンチャーには成長過程においてさまざまな課題が存在するが、IT(情報技術)業界でいえば、喫緊の課題の上位に挙げられるのが、常態化している「エンジニア不足」だろう。

 今回は、エンジニア不足が叫ばれて久しい中で、質・量ともにエンジニア採用を成功させ、業績を急速に伸ばしているSHIFTの人材採用と育成の秘訣に迫る。人材採用と育成は、ベンチャーが上場後も成長を続けるための重要な一手である。

あらゆる業界で課題となっている「エンジニア不足」

 ソフトウエアの検証・品質テスト事業を起点に、セキュリティー、DX(デジタルトランスフォーメーション)、カスタマーサクセスなど、さまざまな関連事業を展開しているSHIFT。2005年の設立後、14年11月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場、19年10月には東証1部(現東証プライム)に市場を変更し、着実に成長を続けている。

 その成長を現場で支えているのが、今回のテーマでもある「人材」、すなわち「エンジニアたち」と言えるだろう。

 近年は、DXニーズの高まりを受け、あらゆる業界でエンジニアの採用競争が起き、多くの企業が採用に苦労しているのが実態だ。そのような現状にもかかわらず、なぜ、SHIFTはエンジニアの大量採用、そして戦力化が可能なのだろうか。まずは、数字の面から見ていこう。

 SHIFTの強さを証明するデータとして、いの一番に挙げるべきは、「エンジニア数の推移」「エンジニア単価(1エンジニア当たりの月次売上高)の推移」だ。

出所:SHIFT「2022年8月期第4四半期および通期決算説明会資料」を基に筆者作成
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出所:SHIFT「2022年8月期第4四半期および通期決算説明会資料」を基に筆者作成
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 図表をご覧いただければ、一目瞭然。エンジニア数だけでなく、エンジニア単価においても上昇トレンドを継続している。エンジニア数は直近1年で2300人増加、直近1年のエンジニア単価も連結で2.2万円、単体で4.1万円向上している。

次ページ 巨大な人事組織とKPI管理がたぐり寄せた「採用数・単価向上」