スピーディーにM&Aを実施できるわけ

(3)ソーシングを行い、規律に沿ったM&Aを実行

「今後のM&A/PMI戦略および『SHIFTグロース・キャピタル』に関する説明会」資料(SHIFT)を基に筆者作成
「今後のM&A/PMI戦略および『SHIFTグロース・キャピタル』に関する説明会」資料(SHIFT)を基に筆者作成
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 ここまでの手順を見て、「マッピングによるターゲットのフォーカス、規律設定による買収基準を厳格化すると、スピーディーに多くのM&Aを実施するのは難しくなるのではないか」という疑問が浮かんだ方も多いのではないだろうか。

 SHIFTはもちろんそこにも手を打っている。厳しい規律を設けながらも多くの案件を実施するため、他社では考えられないソーシング(ターゲット企業の選定と交渉)数を確保しているのだ。

 事実として、21年の1年間だけでソーシング数は合計334件にのぼり、そのうちの約4分の1は売上高50億円以上と、一定の事業規模を有する企業も少なくない。

 SHIFTはソーシング数の確保や、その後のM&A実現のため、2つのことを徹底的に行っている。

 1つ目は、「意思決定の早期化」および「M&A実績の積み上げ」だ。SHIFTは他社よりバリュエーション(買収価格)目線が厳しくても、短期間で「Yes/No」判断をし、多くのM&A実績がある。このため、仲介会社・金融機関などからすれば、数多く情報提供を求めながら、意思決定に時間がかかり、めったに買収をしない(手数料を落とすことのない)企業よりも安心して、案件を持ち込みやすい。

 この点をSHIFTのキーマンに確認したところ、次のようなコメントが返ってきた(22年8月時点)。

  • 意向表明書(いわゆるLOI)を提出してからM&Aが実行されるまでの、過去全案件の平均日数は59日(相対案件に絞ると41日)
  • M&A情報を持ち込んでくれた「銀行・証券会社・M&Aアドバイザー・仲介会社」の数は100社以上

 LOI提出からクローズまで半年かかることも少なくない中、2カ月弱という圧倒的なスピードで対応していることは目を見張るものがある。また、「M&A情報を持ち込んでくれた企業数は100社以上」というのは、日本のほぼすべてのM&Aに関わる会社から持ち込まれていることを意味していると言っても過言ではない。

 そして何より、「平均日数」「持ち込み企業数」などが社内で数値化されており、即時に回答があったことに私は驚いた。

 2つ目のポイントは、過去M&Aにおける買収後の成長、成長による従業員報酬の向上、経営陣へのグループジョイン後のインセンティブ設計、それらの実現を支える「PMIラインアップ」の整備を図っている点だ。

 買われる側の経営陣としては買収価格だけでなく、M&A後の従業員の待遇、買収後のインセンティブ設計も重要なポイントとなる。買収価格だけでない魅力を提示し、「価格だけではない勝負」を実現していることもまたSHIFTならではの取り組みと言えるだろう。

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