驚異的なオーガニック成長率
次に、SHIFTのM&Aにおける驚くべき実績について確認しておこう。
これまで実施した17件のM&Aのうち、のれんの減損をしたのは1件のみ(22年8月時点)で、買収後の会社のオーガニック成長率(為替や買収などの影響を除いた既存事業の成長率)は年32%(2021会計年度3Q以前にM&Aした会社の、2021会計年度3Q累計と2022会計年度3Q累計の売上成長率)という驚異的な数字を残している。
自社のターゲットとなるM&Aを20件近く行うこと自体容易ではない中で、ジョインした会社をオーガニック成長させ続けることは並大抵のことではない。一体、どういった戦略、ノウハウがあれば、ここまで高い成長率を維持できるのだろうか。
私はその鍵は、SHIFTが実践している徹底した「因数分解、数値化」が握っていると見ている。これは、M&Aに限った話ではない。人事採用、営業、技術力向上など、あらゆる領域で実践されていることであり、物事を細分化した上で因数分解、数値化し、その数値を追いかけて、改善していく――。これを高速で徹底的に実施することで、SHIFTは高い成長を実現しているのだ。
M&Aそのものにおいても因数分解、数値化のすごみの片りんが見て取れる。ここからは、SHIFTのM&Aを、順を追って見てみよう。4つのポイントに絞って追っていく。
(1)自社のターゲットを特定する戦略マップを作成
そもそも闇雲にM&Aしても成功するわけもなく、そこには戦略が必要になる。SHIFTの「戦略」を可視化しているのが、上に示した「M&A戦略マップ」だ。
マップの左端に「ITガバナンス」「アプリケーション」「インフラ」「ネットワーク」「データセンター」「ソフトウエアサービス」という項目が並んでいることからも分かるとおり、ターゲット領域を設定した上で企業を選定するという手順を踏んでいる。つまり、このマップがあることで必要なピースが明確になり、ターゲットリストの作成、持込案件の増加につながっているのだ。
(2)M&Aを成功に導くための規律を設定
「M&A戦略マップ」を軸に、ターゲット領域、企業の選定が完了したらすぐに実行するのかといえば、そうではない。M&Aを成功に導くための規律を明文化し、その規律にのっとったM&Aとなっているかを随時チェックできるようにしているのだ。
例えば、「低バリュエーションでのM&A」という項目には「のれん負けしない企業」という規律に加え、買収価格に対する「EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)倍率5倍程度」と「数値」がしっかりと記載されている。また、グループ間のシナジーを最大限引き出すために必要な「既存サービスとの高い親和性」、継続した成長を実現するための「人材獲得」について明記されているのも見逃せないポイントと言えるだろう。
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