ベンチャーが海外M&Aを成功させるコツ

端羽:海外M&Aが選ぶべき選択肢になったときに、やはり言語というのは買い手側が乗り越えるべきハードルです。その中で必要なのが社内での語学教育です。

嶺井:社内で勉強会などは行いましたか?

端羽:学ぶように促していた部分もありますが、一番は社内の英語ができる人の比率が高くなり自然と学んでいく空気づくりが大事です。他のベンチャーと比較すると英語ができる人は多かったのですが、とはいえ大人になってから勉強するのであまり流暢(りゅうちょう)ではありません。でも、恥ずかしがらずに話していくことで乗り越えられる部分があります。

嶺井:英語に対してアレルギーがないというのは大事ですね。

端羽:今後ますます海外進出を加速していくという話を、早い段階から社員全員が理解していて、その方向に向かっていきました。社内で話せない人、比較的英語が苦手と入社時には思っていた人も、話せるようになりたい・なると思っている。M&Aや海外事業を始めたことで、他のチームから刺激を受け自然と自主的に学習するようになっていきました。

 もちろん通訳を使うシーンもあります。取締役の中には、英語が流暢(りゅうちょう)でない人もいて通訳を挟んでコミュニケーションを取る場合もありますが、議論が白熱していくと、分かり合えない部分が出てきてしまうんです。最低限、英語に流暢な人が海外M&Aでは必須だと思います。

嶺井:海外企業だからこそ経営統合のプロセスのPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション、M&A成立後の統合プロセス)で壁というのはありましたか?

端羽:もともと私自身、投資会社での買収経験が何度もあった中、今回に関してはいつになくスムーズな買収だと感じました。というのも、ビザスク・コールマンの目指す未来が非常に近しかったからです。

 データベースが広がる、プロダクト連携、営業連携、商流が広がるなど、買収する側もされる側もメリットが明確にありました。一言で言うならびっくりするほどやりやすかった買収です。その差は、共通ゴールが一致しているかいないかだと思います。

嶺井:歴史あるコールマンを若いビザスクが買う。それに対して、買収先企業のモチベーションが下がったり、軋轢(あつれき)が出たりというのはありませんでしたか?

端羽:向こうもVCやファンドから投資を受けていました。そのため、いつか別の形で経営に介入されたり、異業種に買収されたりする可能性もありました。なので、ビザスクに買収提案される前から、買われる可能性について理解していた部分があり、意外と擦り合わせに手間取ったという印象はありません。むしろ買収された後に買収先がビザスクでよかったと打ち明けられました。

 ビザスクの2倍の規模ということで「コールマンが買収元になるといった逆の形でもよかったのではないか」という意見も、M&A発表後のタウンホールミーティング(コールマン経営陣が従業員と対話する場)でありました。それに対して、ケビン(コールマンCEO、ビザスク取締役)が「ビザスクは、この業界で唯一の上場企業だ。M&Aによって我々も成長に向けてパブリックマーケットにアクセスできるようになるんだ」と言ってくれたんです。買収された側がメリットを感じてくれているなとうれしく思いました。

嶺井:なるほど。それはうれしい感想ですね。

端羽:今回の買収で良かったのは、変に何十%の株を持ったり持たれたりということがなかったこともあると思います。ファンドの中には共同投資のプランを提示する場合もありましたが、そのスキームだと誰が意思決定し誰が責任を取るのかが分からないということにつながりかねないと思いました。100%の子会社として着地したことも、軋轢を生まないコツではないでしょうか。

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