上場直後にM&Aチームが稼働
嶺井:検討はいつごろから始まったのでしょうか。
端羽:コールマンとの出合いは、社外取締役とグローバルCSOの瓜生英敏が数年前に会ったことがありました。そもそも、買収自体は上場の際にも今後の戦略として発表しているように、いずれ実施したいとは考えていました。ただ、上場して自分の会社がしっかりとマネジメントできるようになってから買収を検討すべきだと胸に秘めていました。
その後、上場後すぐに経営陣を中心にM&A勉強会を2週間に1回やっていました。定例化することで領域や候補先企業をリストアップして持ち寄る期限が生まれ、M&Aの検討を前進させる良いプレッシャーがありました。
嶺井:なるほど。面白いですね。候補先企業はどういう基準で選定されましたか?
端羽:買収企業の候補を幅広くするため、いろいろな企業を検討しました。それは海外だけでなく、国内も含めてです。国内であれば、アドバイザーのデータベースにおいてシナジーがあるかという点が選ぶ基準になりました。海外でいえば、比較的に同業他社が中心となりました。データベースをいかにして広げるか、もしくは今あるデータベースをより活用するか、商流を広げるか。評価基準をつくり、データベースを広げて商流が広がり、なおかつシナジーが見込める企業としてコールマンが最善と考えました。
成功事例がないことは失敗する理由にはならない
嶺井:112億円という金額は、当時の時価総額やバランスシートにおいて、なかなかチャレンジングな買収だと思います。規模については躊躇(ちゅうちょ)されなかったでしょうか。
端羽:いえ、私はもっと大きな買収を考えたぐらいです。自分たちとしてはバランスのいいところに落ち着いたといったイメージです。
嶺井:買収の一番の壁はなんだったのでしょうか。
端羽:ファイナンス(資金調達)です。大きな会社を買収したという考えはありませんでしたが、壁は厚かったです。スムーズに資金が集まらなかったとき、なんなんだろうという気持ちになりましたね。
嶺井:どんな理由でNGだったのですか?
端羽:一番驚いたのはリスクについてです。「日本企業が海外企業を買収して成功した事例は少ない。だから、失敗するリスクが高いのでお金を出せない」と言われたことです。
その理由は、数年前にベンチャーキャピタルからお金を集めたとき、「女性起業家の成功確率は高くない。だからお金は出せない」と言われたときと同じ状況でした。リスクは1件ごとに、成功するかしないか精査すべきです。過去の傾向を理由にして資金調達の可否の判断を下すのであれば、今後成功する企業は出てこないではないかと憤りに近い感情を覚えました。
嶺井:それは悔しいですね。逆にビザスクが成功すれば、次の上場ベンチャーが調達しやすくなりそうですね。
端羽:そうですね。今回の買収を失敗することは今後上場ベンチャーが海外企業を買収しづらくするので、絶対に成功させねばという使命も感じています。
嶺井:探せば成功事例もあるでしょう。端羽さんの言う通りリスクは個別に判断されるべきであって、一緒くたにして判断されるのはおかしいですよね。
端羽:当然、ビジネスにおいて百発百中はありません。ただ、失敗をすると思って挑戦しているわけではありませんし、仮説を立てて挑戦していくこと自体が許されないのはなんだかおかしいと腹が立つことは多かったです。

後編では、買収の壁をいかにして乗り越えたのか。そして買収後どうやって海外企業との企業文化の擦り合わせを行っていったのかを紹介する。
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