2020年3月に東証マザーズ(当時)上場を果たしたビザスクは、スポットコンサルをはじめとしたビジネス知見のマッチングプラットフォームを提供する中、同業の米コールマン・リサーチ・グループを21年11月に112億円で買収。取扱高100億円超、登録アドバイザー数46万人超のグローバル・プラットフォームに成長した。海外に進出する上でシナジーのあるM&Aであることは間違いない。だが規模が大きく、海を越えた先でのM&Aでもあり、乗り越えたハードルも大きかったはずだ。M&Aの舞台裏を端羽英子CEOに聞いた。

小が大と組む買収背景

嶺井政人(以下、嶺井):本日はお時間をいただきありがとうございます。今回は、上場後早くになぜ大規模な海外M&Aを行ったのか、その舞台裏を聞かせていただきたいです。買収先の企業は、03年に創業したコールマン・リサーチ・グループ(以下、コールマン)でビジネス的に相乗効果が見込める領域になるかと思います。その中で、本M&Aを実施した理由は何でしょうか?

端羽英子(以下、端羽):ビザスクがこの買収を行ったのには大きく2つの理由があります。「海外進出に伴う時間の短縮」と「海外データベースを持つこと」が必要だと感じたからです。ビザスクは、組織・世代・地域といった障壁を越えて知見をつなぎより良い未来へ貢献することを目指しているのですが、地域の定義は日本国内だけでいいはずがない、世界中の知見をつないでいきたい、そう思っていました。

端羽英子(はしば・えいこ)株式会社ビザスク 代表取締役CEO
端羽英子(はしば・えいこ)株式会社ビザスク 代表取締役CEO
熊本県生まれ。東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門にて企業ファイナンス、日本ロレアルにて化粧品ブランドの予算立案・管理を経験し、マサチューセッツ工科大学にてMBA(経営学修士)を取得。投資ファンドのユニゾン・キャピタルにて企業投資に5年間携わった後、2012年3月に起業。2020年3月、東証マザーズに上場。(写真=ShujiYamaguchi、以下同)

嶺井:20年1月にビザスクではシンガポール拠点を開設していますよね。オーガニックな成長をもくろみつつ、なぜ同時に米国企業を買収したのでしょうか。

端羽:シンガポールの拠点はアジア全体にマーケットを拡大することを目的としてつくりました。ですが、ゼロから新たな地域に進出することはとても時間がかかるというのはそれ以前から身に染みていました。そこで今回は、買収することでより早くビザスクの将来像へ近づけると考えて実施しました。

 IPO以前から、日本だけをマーケットとして見ない。将来的には事業規模の大きな米国に進出しようという話は口を酸っぱくしてメンバーに伝えていました。ですが、日本で事業拡大しているタイミングでは、リソースの分散化や戦略のぶれが発生してしまうため、ペンディングとしていた背景がありました。

 コールマンは、登録されているアドバイザー数や取扱高がビザスクの2倍と大きく、オーガニックでこの規模には数年では到達できません。全世界にビザスクのマーケットを浸透させていくというのは、アドバイザーもそうですが利用するクライアントの開拓も行わなければならないといった課題がありました。

嶺井:アドバイザーと企業をつなぐというサービスにおいて、海外を絡めることによってどのようなニーズに応えていけるのでしょうか。

端羽:例えば日本から海外にビジネス進出したいと思ったとき、これまで調査を依頼する先は限られていました。また依頼するにしても必要な予算規模が大きくなっており、この選択肢を取れる企業や事業は限られてしまいます。もっと気軽に相談したい、海外進出の知見を得たいといった潜在的なニーズがあると常々考えていました。

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